2015年3月17日火曜日

サーフィンのパドリングを視点にしたうねり対応の泳ぎ方

 ロットネストのうねりは1mを越えることもあるので、オープンウォータースイムというよりサーフィンの世界に近い。そこで興味深いビデオを見つけた。

サーフィン ビギナーズバイブル ゲット編

 波に対して変化させるパドリングの考え方は、スイムにも適用できるのはないかと考え、TIコーチでオープンウォータースイム・スペシャリストの吉田智江さんに聞いてみた。吉田さんは日本人としても決して体格が良いわけではなく、力でなく知恵と経験で波に対処している。

○上記ビデオを見て

ボードが有る無いで体の横の傾きの有る無いの違いはありますが、波をクリアする方法は基本的に同じです。大きな波は潜った方が良いし、小さな波は少し体のポジションを下げて上を通す程度です。
 違う所は、サーフィンでは足の着く場所で小さな波は上を越えるという所です。スイムの場合、体の大きな人なら上を越える事は可能ですが、波の力が一番強いのは一番上ですから、越え損ったら間違いなく戻されます。ボードがあるよりも、体だけなら沈めやすいので、わざわざ危険を冒して上をいく必要も無く、潜ってクリアすることになります。


 上記ビデオに対応する形で、スイムのコントロールを

  • スイッチのタイミング(入水の手が入るときの水中の手の位置)
  • リカバリーの手の形や速度
  • テンポ
  • キック
  • 姿勢
  • 息継ぎなど

のポイントでまとめてもらった。


○足の着くところで小さな波をクリアする

  • 腰くらいまでなら、泳がずに進む。勢いの無い波ならば、波に当たる時に横向きでかわし、ドンドン前進する。力のある押し戻されそうな波は、立ち止まって、しっかり前後に足を開き横向きで踏ん張り、波を腰で切る。
  • 腰以上になったら、小さい波なら少しポジションを低くして頭をツッコミ気味で泳ぐ。大きな波なら、勢いをつけてドルフィンダイブで波の下をスルーする。続けて大きな波が来るようなら、もう一度立って、同じ様にドルフィンスルー。大きな波が来ないなら、そのまま泳ぎ出す。

○足の着かないところで小さな波をクリアする

  • 規則正しく正面から押し寄せるウェーブの場合も、ぶつかって出来る不規則な三角波も、サイズが小さければ、いつもよりも体を下げて、水面下10センチくらいの所を泳ぐような感覚。ノーズを少し下げる様に、頭を下げ、入水も少し深めにして、背中の上を水が覆う様なポジション。重心は肩~肩
  • スイッチのタイミングは、指先が充分入水してからが良い。その方がスムーズに体を沈め易い。何故かと言うと、波によって水面の高さも角度も変わるから。なるべく水面を叩かない様にスムーズな入水が良い。体が平らにならない様に、指先が入水するまでは側を残す。グライド側の手をしっかり残し、スイッチ直前まで側を保つ。入水側の肩の高さを保ったままスイッチすることで、肩の落下で深く入れる。
  • リカバリーの形、速度はいつもと変わらないが、入水ポイントが少し近くなる。それは、確実にスイッチの時に指先をディップした状態にしたいから。いつもの位置で指先を沈めると肘が伸びてしまい、腕の入水角度が足らなくなり、落下の力が活かせない事、そして不規則な水面を腕全体で捕らえてしまう。
  • テンポは普段とあまり変わらない。静かな水中をグライドして泳ぐ。
  • キックもいつもと変わらない。
  • 姿勢自体は変わらない。
  • 息継ぎは、頭がいつもより深くなるので、リカバリーの肩が上がった時に合わせると吸い易い。

○大きな波をクリアする-波が向かってくる場合

  • 波の麓でグライドの手をそのまま前に置いたまま、リカバリーの腕を深めに差し込み両手合わせて潜る。あまり深く潜らなくても、波が上を通り過ぎるので大丈夫。大切なのはタイミング。サイティングで目で確認する事と、体の浮き沈みで、波の波長を判断する。
  • 重心は指先。
  • スイッチはしない。両手合わせて潜り、浮き上がりの一掻きと同じ様に浮上する。
  • リカバリーは少し高い所を通り指先が空中で弧を描くようにすると、潜り易い。
  • キックは水中では打たずに揃えるか、ドルフィンキックを入れる。
  • テンポは波に合わせる。
  • 姿勢は潜る時は少し体を丸めて、浮上は少し前を見る。
  • 息継ぎは潜る前にリカバリーに合わせて入れる。 

○大きな波をクリアする-波が後ろから来る場合

  • この時ばかりは、側を使わない。体全体で後ろから来る波を捕まえる。
  • 重心は前重心、ノーズを下げて波を受ける。
  • スイッチのタイミングは、グライドせずに後ろからの波が腕全体に当たる様に肘を曲げて腕を下げた所でスイッチ。
  • リカバリーは、側を作らない様に横から回す。リカバリー自体の速度は上げなくて良い。
  • テンポはグライドしない分、速くなる。
  • キックはドンドン入れる。
  • 姿勢は左右の傾きを作らず、胸骨をしまって胸を反らない。平泳ぎのスタート、一掻きの姿勢で水を受ける。
  • 息継ぎは特別変わらない。 

○大きな波をクリアする-波が横から来る場合

  • 横波の泳ぎ方は、向い波の泳ぎ方の応用、下げて潜る場所が頭ではなく肩から潜る。
  • 重心は沖側の肩・肩甲骨。
  • スイッチのタイミングは変則になる。沖側のグライドは深め長めに、浜側のグライドは浅め短めに。これは、体が波で浜に押されない様にする為。浜を右に見て泳ぐ場合、左から来る波に左開きの側を作ると波に押されるので、右手(浜側)グライドは短めか、強さによってはグライドしない。
  • リカバリーは、沖側は肘を高くして少し手前で入水。浜側は横から回す。
  • テンポは、変則。沖側はリカバリーの滞空時間は短いがグライドは長い。浜側はリカバリーは大きく横から、グライド時間は短い。
  • キックは左右のストロークテンポに合わせるので変則。
  • 姿勢は、沖側の肩・肩甲骨が前下がりになる。
  • 息継ぎは浜側が良い。 

○不規則な大きなウネリの対応

  • 今年のロットネストの様な、不規則で大きな波(うねり)の場合は波のひとつひとつを予測し対応する事は困難なので、強めの前重心を作り、上半身が浮かない様にする事と、波の力をかわす為に、体を平らにしない事。
  • 常にどちらかの側を作った状態で、下側にしっかり体重をかけて安定させる必要がある。その為は上半身と下半身をひとつにし、エッジを直線に保ち、体に受けるウネリの動きを少しでも減らす。
  • 重心は強めの前重心
  • スイッチのタイミングは波が読めないので基本はいつも通りだが波によって体が動かされる場合は、それに合わせる。
  • リカバリーは少し横から勢い良く、親指から入水する。肘の角度が鋭角になるほど、二の腕の動く速度が遅くなるので、肘の角度は低めにして素早く二の腕を前に振り、その勢いでスイッチする。肘が低い分、腕は外から回ってくるので、入水はいつもより手前外側から親指を先頭に入る。滞空時間は短く、肘が鋭角で無い分、横からの一点入水で、腕の全面で海面を捕らえない様に気を付ける。素早くリカバリーする事で、前重心を強め、ウネリに負けない力強い入水になる。
  • テンポも波のリズムに合わせるので不規則。
  • キック幅は小さくしていつもよりは多めに軽快に打ち、ウネリに足が流されない様に。
  • 姿勢は、絶対に平らにならずに、しっかりとした側を作る。
  • 息継ぎは波で口が出にくい様だったら、空を見上げて確実に。真上ではなく、少し後方の空を見た方が顎を引く事が出来るので誤飲を防ぎやすい。
  • 向い波にしても、大きなウネリにしても、下を通った方が良いが、乗ってしまった場合は上を越えるしかない。また、サイティングを目的とすれば、波の上の方が見通しが良いので進んで乗る。波の頂上に来たら、大きく勢いをつけて前重心で滑り下りる。体が持ち上げられるので頂上は解るから、そこからまた後ろに下がらない様に、片手バタフライの要領で思いっきり突っ込む。スイッチのタイミングや、リカバリー速度と形、テンポ、キック、姿勢、息継ぎ・・・どれをとっても波が一定で無い限り、臨機応変に対応する柔軟性が必要。それも基本が出来ていればこそ。 

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