2015年3月13日金曜日

絶対音感から相対音感へ

自分の泳ぎをゼロベースで見直し、1年をかけてCROS(Cold Rough Open water Swimming)モードを完成させる。CROSの要件は以下の通り。

  1. 下半身を安定させると同時に斜め姿勢を作るキック:6ビートまたは2ビート(はさみ込み型)
  2. うねりの状況に合わせてスイッチのタイミングを変える:Front Quadrantは維持しながらキャッチ主体、プル主体、プッシュ主体と推進力のソースを変える。
  3. 速いテンポでの空回り防止:海水では手の動きが軽くなるため慎重にコントロールしないと空回りする。前回のスイムでは完全に空回りしていた。0.90秒でも空回りしない泳ぎを身につける。
  4. リカバリーの手の軌跡を可変にする:うねりの状況に合わせて手の高さを変える。左右異なる軌跡にする必要もある。
  5. 水面基準から自分の体基準へ:次に述べる。
これまで「効率が悪い」と避けてきたことについても試してみて、効果が感じられるものは積極的に取り入れる。

「絶対音感」(客観的感覚)から「相対音感」(主観的感覚)へ

ロットネストではうねりが大きくなるにつれて、自分の泳ぎができなかった。ビデオを見ながら振り返ってみて、普段の泳ぎで使っているコントロール力やセンサーが失われていることがわかった。

これまで10年にわたって泳ぎを磨いてきたが、このときに基準になったのが「どのように見えるか」である。完璧に見える泳ぎを目指すため、自分の泳ぎを撮影し、デザインした泳ぎ方と比較して違いがあれば修正していった。このときの見え方の基準が「水面」である。水面に対してどの位置に、どのような角度で手や足を置き、動かすのか、私の動きは水面に対する位置関係に基づいている。そしてこのときの水面は水平であることが前提であり、私の体内の方向感覚も水平が基準になっている。

ところがうねりの大きい海では、水面の角度は常に変化する。私の方向感覚は水平が基準であり、水面の角度の変化への適応能力はほとんどない。これが自分の泳ぎができなかった最大の要因であることがわかった。

これは絶対音感と相対音感の関係に酷似している。私は学生時代、音楽を聴き取ってパート別にデータ化する「打ち込み」を趣味としていたことから、耳が絶対音感になっており、カラオケでもオリジナルキーでしか歌えない。半音でも違うと違和感を感じてメロディーについていけなくなる。音階は「周波数」という絶対的な基準に基づいているので、異なる周波数では適応できない。

同様に水泳でも「水平」という絶対基準に基づいて全てをコントロールしていることから、その前提条件が変わることで一気にコントロール力を失うのである。

相対音感があると、自分自身の中に音階の基準を作り、キーがどのように変わってもその音階に合わせて歌える。水泳で言えば自分自身を座標軸の中心におき、常に自分のからだに対して姿勢や動作を決める。これは客観的感覚から主観的感覚への大転換である。

これまで磨いた客観的感覚で、自分の動作や姿勢を人に伝えることができるようになり、様々な上達手法を生み出すことができた。ただし水面が大きく変化するCROSに適応するためには主観的感覚を磨く必要がある。最適な練習法はうねりの中で泳ぐことであり、プール練習でどこまで基準が作れるかはわからないが、自分のからだを基準とする座標面の構成を目標にする。


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