2018年6月2日土曜日

ラクに滑って泳ぐための技術 2



ラクに滑って泳ぐ技術として、後半は滑ることに焦点を当てて整理する。

○滑って泳ぐ技術とは

「滑っている」というのは、推進力を加えなくても前に進んでいる状態のことを指す。
最も簡単にイメージできるのは、アイススケートやローラースケートである。
これらのスポーツにおいて滑っているときの特徴は以下の通りである。
  • 摩擦の小さい氷や車輪を使っていて、地面から受ける抵抗が小さく減速しにくい。
  • 減速するまでの時間が長いので、推進力を加える間隔も長くなる。
  • 推進力を生み出すのは体重の移動と地面に対して押す力である。
従って水泳において滑るためには、以下のようなことを技術して身につければよい。
  • 水の抵抗を減らす。
  • 減速するまでの時間を延ばす。
  • 体重移動と水を運ぶことで推進力を生み出す。

○水の抵抗を減らす

水の抵抗は投影面積に比例する。投影面積が増える最大の原因は下半身が下がることなので、下半身が下がらないようにすればよい。方法は2つである。
  1. 前に移動しながら体重を前にかける。
  2. キックで足を浮かせる。
1については、体重を前にかけることが感覚的に理解できればいつでも使うことができる技術である。顔と胸で水を押すというイメージでも良い。ここで重要なのは、伸ばした手の側に体重をかけるのではないということである。横方向ではなく前に体重をかけることで、下半身を浮かせることができる。
2については、足が浮くのに必要な足の動かし方を身につければよい。これは普段考える4分の1~5分の1の力で済む。前を進む目的を取り除けば、キックはものすごくラクにすることができる。

○減速するまでの時間を延ばす

水の抵抗を減らすことで減速しにくくなるが、推進力を加えるタイミングを遅くすることで滑る時間をさらに長くすることができる。具体的にはリカバリーの手を入水するまで、水中の手を伸ばしてグライド姿勢を維持する。
さらにタイミングを遅らせて、手を入水して伸ばしてから、反対の手を動かす「キャッチアップ」にすると、滑る時間は長くなるが両手を同時に動かすことによる加速が得られなくなり、手のかき動作だけで推進力を作る必要がありラクには泳げない。
従って「ラクに」「滑る」を両立させるためには、手の入水で両手を同時に動かす「スイッチ」のタイミングが最も適している。

○体重移動と水を運ぶことで推進力を生み出す

体重を前にかける動作を行うことで、重心が前に移動して滑ることができる。泳いでいるときは常に体重を前にかけるようにする。
また手で水を後ろに運ぶことでも推進力が生まれる。手のひらの向きを正しい形にして水を運び続けることができれば、力を入れなくても推進力が生まれる。

ワークショップでは「ラクに泳ぐ技術」「滑って泳ぐ技術」についてドリル形式で身につける。グループレッスンにより効果が得られた後、カリキュラムとしてパッケージングしてオンラインスクールで提供する。

90分泳ぎ続ける

スイム 5650 yd

来週より日本出張で練習時間が大幅に減ってしまうので、たっぷり泳ぐことにした。
カリフォルニアはメモリアルデイ(戦没将兵追悼記念日、5月最終月曜日)が夏の入口になる。大概の公営プールは次の週末から夏営業となり、日曜日もオープンして子供用プールも運営を始める。
本格的な夏を迎える前に練習しておこうとする大人も増えるので、1コースを専有して長く泳ぐのは今日が最後である。ということで90分続けて泳ぐことにした。

泳ぐためのコンディション


  • テンポトレーナー・プロを1.15秒に設定。これはリラックスして泳ぎ続けるテンポである。
  • MP3プレーヤー:耳栓も兼ねており非常にコスパが高い。

泳ぐためのプラン

  • 90分を30分ずつ3つに区切る。
  • 1500m(1650yd)を26分程度のペースで泳ぐ。最初の30分はフォームを意識してゆっくりめ、次の30分は速く泳ぎ、次の30分は疲れに対応する。


最初の30分

テンポ練習をしばらく行っていないためか、最初の100まではテンポがとても速く感じた。空回りしないように水中ストロークの軌跡を短くして体重を前にかけることを意識した。
テンポが合ってきたら、正しい入水場所、水中の手のひらの向きを意識して泳いだ。
1650 ydの折り返しは26分30秒でほぼ予定通り。ゴーグルに水が入るので300毎に水抜きを行った。

次の30分

肘が痛み出す。水を前腕で引っ張る意識が強いことが原因である。1時間以上泳ぐ場合にこの引っ張りは要注意である。疲れてくるとグリップが一気に緩んで空回りする。最初の30分では17ストロークを維持していたが、肘が痛み出してからは19ストロークまで落ちた。
水を引っ張らずに手のひらに水を当てて、それをできるだけ長い距離運ぶように意識した。

最後の30分

意識をしないとすぐに19ストロークまで落ちる。疲れてきたときの最初の対策は、体重を前にかけることである。からだの中央に体重をかけながら、伸ばす手の位置を下げることで「手に体重を乗せた」状態を作る。手に当たる水の強さを大きくすることができる。
ほぼ予定通りのペースで75分泳げたので、残り15分は10%速くした。18ストロークを維持してキャッチやプルに使うエネルギーを増やした。

1時間31分泳ぎ、距離は5650 ydであった。平均ペースは24秒/ラップで、長時間泳ぐため慎重に泳いでペースが遅くなった。今後長距離泳についても練習して、22.5秒ペースで6000 yd泳げるようにしたい。

2018年5月19日土曜日

長く泳ぐときに起きるトラブル

スイム 4850yds

週末は長時間を続けて泳ぐことにしている。
今日は70分を続けて泳いで、長く泳ぐとどのようなトラブルが起きるかを観察した。
これらのトラブルは集中している泳いでいるときに重大な阻害要因となる。
トラブルを未然に防げるものは防ぎ、発生が避けられないものはダメージを最小限に抑える工夫が必要である。

1.ゴーグルが曇る

ゴーグルは曇る。曇り止め機能のついたゴーグルでも、2,3回で曇るようになる。
プールでは水を中に入れてすすげば曇りがとれるが、海では絶対にしてはならない。
このトラブルは「曇り止め」を使うことで防ぐことができる。
曇り止めを使うときの手順は以下の通りである。
  1. 最初に曇り止めを塗る。スプレータイプより液体を塗るタイプが良い。レンズ内にまんべんなく塗る。レンズ内に汚れが付かないように、指を使わずに曇りだけで伸ばす。
  2. 水道水で浸す。レンズの正面部分が隠れる程度に水を入れて、あとはゴーグルを回して浸透させる。決してプールの水でやってはいけない。化粧水などを入れる旅行用のボトル(やわらかいタイプ)の小さいものを用意すれば、水道を探す必要がなくなる。
  3. 水をなじませる。曇り止めの成分は界面活性剤(洗剤)である。レンズ面に水の薄い膜を張ることで曇らないようにしている。レンズ面が濡れたら水を切る。
  4. ゴーグルを装着してから水を完全に切る。水が残っていると石けん水となり、目の中に入るととても痛い。装着してから下側に隙間を空けて、中の余計な水を完全に切る。
  5. 外さない。内面が乾くと曇り止め機能が終わる。ゴーグルを装着している限りは目が出す蒸気で内面は湿ったままなので曇らない。外さない限り7時間はもつ(個人的な経験より)。

2.ゴーグルがずれる

プールでは飛び込まない限り発生しないが、オープンウォータースイムやトライアスロンのレースでは他人とのバトルでゴーグルがずれる可能性がある。最初のバトルでゴーグルを飛ばされ、結局みつからずにリタイアしたというケースもある。プールでもプッシュオフを繰り返すことで発生する可能性がある。
ゴーグルがずれることを防ぐには、最初にゴーグルを着けてからキャップを被るのがよい。飛び込みのないオープンウォータースイムではこれを行っている人はあまりいないのだが、バトル対策、さらに以下のキャップ内の空気抜き対策としても「内側ゴーグル」は重要である。

3.キャップがずれる

シリコンやラバーなどの密閉型のキャップを被った場合、頭皮の呼吸によりキャップ内に空気がたまり、キャップがずれてくる。密閉型キャップに空気が入ると、頭にしわだらけのこぶができたようになってとてもみっともない。憐れみを感じるほどである。
対策は3つある。
  • 定期的に水を入れる。頭頂部を手で押して空気を脇に押し出したら、キャップの両耳の脇を引っ張って空気を抜くと同時に水を中に入れる。ゴーグルのストラップがキャップの外側にあるとゴーグルに水が入るので、ストラップを着けてからキャップを被る。なおラバーキャップは引っ張りすぎると裂けるので、レース用に支給されたキャップの場合は注意して水を入れる。
  • 二重にする。レース用キャップを被る必要がある場合に効果的である。空気が入ることがほとんどなくなるだけでなく、保温用にも大変効果的である。ただし二重キャップがルール上できないレース(ドーバー海峡横断)もあるので事前に調べる必要がある。
  • メッシュキャップにする。メッシュの場合は輪郭部分がきつく、その他の部分の締め付け力が弱い。このきつさをきらう人も多いので、メッシュキャップを使うときは事前に被ってみて長時間堪えられるか試す必要がある。なお当然のことながら保温効果はない。

4.耳栓がゆるくなる/痛くなる

スイマーにとって一番弱い場所は耳である。プール内の雑菌が繁殖しやすいので、耳の中に水が入ることを防ぐのは健康増進手段として水泳を続けたい人にとって必須である。
耳栓には「耳の中に入れる」タイプと、「耳の穴を塞ぐ」タイプがある。耳の中に入れるタイプは長時間入れると痛くなる場合があり、塞ぐタイプはゆるくなってはずれることがある。
耳が痛くなる場合は塞ぐタイプ、はずれがちな場合は入れるタイプを試す。
なお初夏や秋など、水の冷たい時期にウェットスーツを着て泳ぐときも耳栓は必須である。耳の中が低温に一番弱いためである。


5.頭の中が白くなる/集中できない

今回は50分を越えた頃から集中できなくなった。
30分以上泳ぎ続ける場合、集中し続けることは不可能である。そこで一旦リセットする意味で、敢えて何も考えずに泳ぐことを100程度は行ってもよい。その後でストローク数を減らす目標を立てて、そのために加速を上げる道具を具体的に使う。
500ずつで100程度のブランクを設ければ、フレッシュな気分を繰り返してスピードも維持できる。

ちなみに最近はいつも防水MP3プレーヤーを使っている。
これまではFinisの骨伝導タイプを使っていたが、充電器との接触部分が腐食して半年ももたなかったので、初めて耳に入れるタイプを使ってみた。
最初は慣れなかったが、耳栓を兼ねることができるので大変良いことがわかった。
ただし水が入ると聞こえが途端に悪くなる。1時間程度が限界か。

2018年5月8日火曜日

ラクに滑って泳ぐための技術 1

「ラクに滑るクロール・ワークショップ」のカリキュラムをデザインしている。
ここ6カ月間の指導経験や練習経験を形にするためにこのワークショップを企画した。
以下のような視点で集中的に技術を磨くことで、これまでのワークショップ以上の効果が得られると期待している。

○ラクに泳ぐ技術とは

ラクであると感じるためには、ラクでない状態を取り除けばよい。ラクでない状態とその原因について考えてみる。
  • 疲れる:筋肉の緊張、前に進む以外の力の使用
  • 苦しい:呼吸→筋肉の緊張、息継ぎの姿勢
  • 進まない:水の抵抗が大きい姿勢、小さな推進力
  • 痛い:可動域を越えた動き
これらの状態を解決することで、泳いでいて「ラクに」感じることができる。
解決する順番は以下の通りである。
  1. 支えを作る。
  2. 使う部位を決める。
  3. 可動域の範囲で動かす。

1.支えを作る

成人スイマーの多くにとって、ラクに感じない最大の原因は筋肉の緊張である。しかしリラックスすることを意識してリラックスできていたら、この問題は発生しない。

最近の指導経験から、リラックスできない最大の原因は「支えがない」ことであることがわかった。人間は動作を行うときに、意識的/無意識に支えを作る。その支えの多くは重力や地面から受ける抗力が基本となっているので、浮力で重力が相殺され、かつ流体である水の中ではうまく機能しない。そこで自分のからだを「硬く」することで、無意識のうちに支えにしようとしているのである。

従って水を押してその抗力により支えを作れば、リラックスする土台が整うことになる。

2.使う部位を決める

支えを作ったら、からだのどの部位を使うかを決める。ここでは「距離てこ」を使うことポイントである。

「距離てこ」とは、大きな力を支点の近くで加えることで、作用点の移動距離を増やすことができるてこのことで、通常のてこの逆である。からだの中では筋肉の収縮により非常に大きな力を生み出すことができるので、大きな力×筋肉の収縮(短い距離)=小さな力×長い距離(部位の移動)により手や足を素早く動かしたり、長い距離を動かすのに使うことができる。

要はからだの中心に近い場所の筋肉を使うことで、手や足など先端の筋肉をリラックスすることができる。これが「ゆる締め」と呼ばれる技術である。


3.可動域の範囲で動かす

最後に手や足を可動域の範囲で動かす。このときには座標の考え方が重要になる。上体を立てた姿勢と寝かした姿勢では座標が異なることが頭では理解できるが、実際に手を動かすときには座標が混在するケースがほとんどである。

正しい座標上で、肩の可動域を越えずに手を動かすための動かし方を理解して、繰り返し練習することでからだに染み込ませる必要がある。

特に気をつけるべきは、以下のタイミングで行われる動作である。
  • リカバリーで水上に手を出す
  • 水上にある手を入水する
  • 入水した手を水中で伸ばして斜め姿勢を作る
  • 息継ぎで口を水上に出す
  • 水中で手に水を当てる
  • 水中で水を押す




2018年5月1日火曜日

年齢の数だけ100を泳いでベストを出す

スイム 5300yds


恒例のバースディスイムは、当日水泳大会だったことや、昨日は気温10度でやる気マイナスだったことなどで3日遅れで実施した。コンセプトは「タスクを全部変えて結局速くなる」である。インターバルで100を53本泳いでも達成感だけで何も残らない。53回異なる頭の使い方をすることで、結果として速く泳げるかどうかを確かめた。

アップ:5×100

1:水慣れ:胸で水を押す
2:フォーム確認:入水の角度と方向、水中の手のひらの向き
3:げんこつスイム:前腕で水を集める、スムーズに息継ぎができることを確認
4:ひとさし指スイム:リカバリーの指の向き、入水時の指の向き
5:クロール:手に水を当てて寄せて運ぶ

テンポピラミッド:10×4×100

テンポは1.15秒スタート、1.30秒まで0.05刻みで落として1.00秒まで上げる(10パターン)。
一つのテンポでげんこつ、ひとさし指、最小限の力、最大の力という4通りで泳ぐ。
  1. げんこつスイム:ゆっくりテンポでは入水動作を素早く行い加速を確保。速いテンポではなめらかな動作を意識。
  2. ひとさし指スイム:キャッチでは指に水が当たるように向きを変える。プル後の指の向きを横にする。プッシュ後の指の向きを後にする。
  3. 最小限の力:手に水を当てながら「寄せる→運ぶ→放つ」ことで力を入れずに推進力を作る。
  4. 最大の力:入水てこ(水中の手を支えにして入水の手を入水直前に加速)、体幹てこ(水を運ぶときに体幹を支えにする)、フィニッシュてこ(入水した手を伸ばす直後にフィニッシュの加速を上げる)
げんこつとひとさし指では3ストローク1回呼吸で左側の息継ぎも練習した。息継ぎがうまくいかない場合は普段手で水を下に押して頭を持ち上げている可能性が高い。また頭を立てていることも原因になる。入水した手に体重をかけながら頭を回すことで口を水上に出す。頭を回す角度を15度上向き(あごを上げる)にすることで、得意な右側と同じような呼吸ができるようになった。

げんこつ→ひとさし指→最小限の力という順番で泳ぐことで、力の入れどころがわかってくる。4本目はその力を最大にして、ストローク数を減らせばスピードが上がる。第1セットの4本目のタイムは1分27秒9で、第7セット(第1セットと同じテンポ1.15秒)の4本目のタイムは1分23秒9と4秒アップ、第10セットの4本目は1分21秒1まで上げることができた。

ペース:3×2×100

力のいれどころが分かってきたところで、ペーススイムに移る。
リラックスペースである22秒から始めて、21秒、20秒をそれぞれ2回泳ぐ。
リラックスペースの1本目では5秒近く貯金ができたので、2本目では力を逆に減らしたものの結果は速くなった。

21秒ペースでは3秒貯金ができたので、力を減らして劣化しない泳ぎにして貯金を作った。

最後の20秒ペースでは力を強調することで1分15秒になった。練習中のタイムとしてこれまでで最も速いタイムであった。ここまで5000ヤードを泳いだにもかかわらず最速タイムが出たので驚いた。

究極の鍛錬

「究極の鍛錬」という書籍が面白い。究極の鍛錬にするためにはつまらないことの繰り返しが必要だということだが、げんこつスイムはまさにそれに該当する。ストローク数は増えるし、スピードは遅くなるし、なかなか壁に着かないのでいらいらする。人生で始めてげんこつやひとさし指を2000以上泳いだが、その結果速くなったので文句はいえない。

心拍数を見ると徐々に増えていて、上記ピラミッドの4本目毎にスパイクしている。前半がおとなしかったので全体としてはまあまあの運動負荷になっている。


スタートしてから終わるまで1時間45分、泳いでいたのは1時間25分で20分間休憩があった。あと5分休憩を削りたいところである。久々に精神的、肉体的に「泳いだ」という感じであった。




2018年4月30日月曜日

[NMP]アルゴリズムのデザイン

水泳のアルゴリズムをデザインするときのステップをまとめる。

1.動きをストロークフェーズで分解する

ストロークフェーズを7つに分解する。
  • グライド
  • スイッチ
  • リカバリー
  • エントリー
  • キャッチ/プル
  • プッシュ
  • フィニッシュ

2.それぞれのフェーズの目的を明らかにする

  • グライド:滑る=支える+乗る=支える+(前に水を押す+動く)
  • スイッチ:両手のタイミングを合わせる
  • リカバリー:水上の手で重心を前に動かす
  • エントリー:手の重みで入水する手を素早く伸ばす
  • キャッチ/プル:手に水を当てて支えにする
  • プッシュ:水を後ろに押す
  • フィニッシュ:水中で水を放って手を水上で引き寄せる

3.支えとなる部位や固定する部位を決める

  • グライド:水中で伸ばした手
  • スイッチ:頭(スイング動作)、伸ばした手/肘(入水動作)
  • リカバリー:水中で伸ばした手、胸鎖関節、水上の手の上腕
  • エントリー:入水の手の上腕、胸鎖関節
  • キャッチ/プル:肘(手首の回転)、上腕(前腕動作)
  • プッシュ:上腕(前腕動作)、体幹(肘を伸ばす動作)
  • フィニッシュ:上腕(放つ動作)、胸鎖関節(引き寄せ動作)

4.動かす部位を時間順に決める

  • グライドの例
    伸ばす手を支えにする→伸ばす手の垂直方向を決める→伸ばす手の水平方向を決める→からだの長軸の回転角を決める→からだの短軸の回転角を決める→腰の位置を決める→両足の間隔を狭める(股間を締める)

5.条件判断のためのインプットと変化させる内容を決める

  • グライドの例
    ー伸ばす手の上と下を通る水の流れ:下の方を厚くする
    ー胸で受ける水の塊:増える手の方向とからだの回転角を見つける

6.意識して動かす部位の順番と条件判断を組み合わせる

  • グライドの例
    「手の上下を通る水の流れ」と「胸で押す水の面積」が最大になるように伸ばす手の方向を垂直/水平に動かして変える

7.ラベル化する

  • 一連の動作を簡単な表現に置き換える
    →動詞のみ、動詞+目的語、動詞+目的語+修飾語
  • インプット(感覚や知覚)を簡単な表現に置き換える
アルゴリズムが正しく動作するかは条件判断で使用するインプットにかかっている。どのタイミングでどのような感覚や知覚が得られるか。さらに文字化するためには、その文字を見れば対応した感覚が想起できるような文字を選ぶ必要がある。

またアルゴリズム全体を暗記しやすくさせる必要もある。組み込み関数を増やして、文字を見ればその動作ができるようになれば複雑な動きでも正しく動作させることができる。







2018年4月27日金曜日

[NMP]暗記のためのラベル化

ラベル化の必要性

動作それぞれがアルゴリズム化されれば、あとはアルゴリズムを覚えれば上手に運動できるようになる。ただし1つのアルゴリズムは20~30のステップ(現段階の分析による)により構成されるので、それらを全部覚えるのは大変である。

そこでこれまでの人生経験において組み込み関数化された動きを活用する。これらの組み込み関数は名前がついており、その名前を見ればからだが何をすればよいかがわかるようになっている。

例:「歩く」

歩くという動作のアルゴリズムは以下の通りである。
  1. 前傾して重心を移動する
  2. 片足が前に出やすいように反対側の足に重心をかける
  3. (インプット)重心がどの程度移動しているか
  4. (条件判断)からだが前に倒れる直前の重心の移動状態を前のめり感100%とすると、30%に達したとき(目標速度による)に片足を前に出す
  5. (インプット)動かした足の移動距離
  6. (条件判断)歩く速さに合わせて移動距離を決めて着地する
  7. 着地した足に重心をかける
  8. 3~7を繰り返す
なおここではどこを支えにしてどの筋肉を使うかまでは記述していない。それらを加えるとステップ数は倍増、三倍増することになる。
速く歩きたいときは4の前のめり感を50%に上げたり、6の移動距離を大きくしたり、3~7をより早く繰り返したりする。

このように複雑なステップを、「歩く」という文字を使えば(歩ける人ならば)誰でもできるようになる。「速く歩く」「ゆっくり歩く」というバリエーションも条件判断基準(パラメータ)を変更することで対応できる。

「泳ぐ」ためのラベル化

それでは「泳ぐ」はどうか。歩くほどシンプルではないからこそ、多くの人が困っているのである。「速く泳ぐ」「ゆっくり泳ぐ」も何をパラメータとして変化させてよいかわからない。
つまり「泳ぐ」を複数のラベル=アルゴリズムに分解する必要がある。一つのラベルはさらに複数のラベル=アルゴリズムに分解することができる。
以下が「泳ぐ」をラベル化する例である。
  • 泳ぐ=滑る+押す
  • 滑る=乗る+支える
  • 乗る=押す+動く
  • 押す=当てる+伸ばす
  • 押す=放つ
  • 伸ばす=縮める
  • 呼吸する=回す+ひねる
  • 回す=伸ばす+つなげる
  • 運ぶ=放つ+抜く
このように「泳ぐ」という複雑な動作を、既知の動作の名称の組み合せにすることで、短時間で暗記して動作できるようにするのがNMPの目的である。