2015年7月25日土曜日

サンフランシスコ湾で周回するときの気持ちとからだの変化を観察する

OWS 4.5km 80分

気温63F(17.2C)、水温64.6F(18.1C)

翌日は昨年参加したサンフランシスコマラソンで駐車場が確保できないため、土曜日のみの練習とした。今回よりアクアティックパーク内3周4.5kmを泳ぐと決め、1周目、2周目、3周目の気持ちやからだの変化について観察した。


スタート前

家を出るときは晴れて天気も良く、気温も74F(23.3C)まで上がって「水泳日和だ」とモチベーションが上がる。

ところが25分程度運転して峠に近づくと霧がかかって気温が下がり始め、峠のトンネルを過ぎた頃には気温は64Fと5度下がる。ベイブリッジを渡りサンフランシスコに入ると霧雨が降り出し、気温は63度まで下がって風も強くなる。観光客はみんな冬の格好である。車を止めて外に出ると地元の冬の状態になる。ここでモチベーションは0になる。

ドルフィンクラブに入って着替え、ビーチに裸足で入った瞬間にモチベーションはマイナスになり、「私はなぜここに居るのだろう。なぜこんな格好(海パン1枚)でこんな寒いところで泳がなければならないのだろう」と自問が始まる。ちょっとした理由を見つけて帰りたくなる。

ここで「やればいいんでしょ、やれば」と投げやりな態度でGarminのスタートをボタンを押すことで、泳がざるをえない状況にして泳ぎ始める。これが3月末から続いていて、モチベーションが0またはプラスで泳ぎ始めたことは一度もない。

1周目

フラッグ(と呼ばれる目印)までの400mは今日のコンディション(海と自分)を観察するのに最適である。風が強かったせいか、朝にしては小さなうねりが多く発生していた。この小さなうねり(英語でChopと呼ぶ)は要注意である。呼吸時に口のなかに海水が入る原因となる。

チョップが概ね進行方向とは逆方向に発生していることがわかったので、テンポを上げてエッジをかけて泳ぐ。左側に流されないように、右手を入水してから2割増で体重をかけて姿勢を安定させた。息継ぎのときのからだの回転角を15度加えて、ほとんど上を向くようにして呼吸した。

フラッグを起点として桟橋の右側を北上するルートでは、普段は右から左に流されるので桟橋から遠ざかるのだが、今日は潮の流れが逆で桟橋に引き寄せられた。桟橋の太い木の柱まで5mまで近づいてしまい、恐怖を感じた。桟橋沿いを目標にするのを諦めて、桟橋の突端の建物に向かって右方向に泳いだ。

海洋公園の出口となる中間地点では、相変わらず大きなうねりがランダムに発生している。6ビートキックで下半身を安定させてから、入水てこを使ってうねりに流されないようにした。

普段はこの中間地点からドルフィンクラブの桟橋までまっすぐ泳ぐのだが、距離を伸ばすためにHyde Street Pierの先端にあるブイまで泳ぎ、Uターンして1番ブイを目指すことにした。防波堤を右に見ながら泳ぐが、防波堤を過ぎると途端にピアに向かう流れが発生する。ただし先週のような強烈な潮の流れはなく、30度程度の修正角でまっすぐ泳ぐことができた。クラブの桟橋に近づくと帰りたくなるので、1番ブイを直接めざして泳いだ。

なお呼吸時に海水を飲むのは慣れたが、そのあとのゲップを出すときの苦しさは今だに慣れない。立ち止まればすぐに出すことができるが、泳ぎながらだと息継ぎをしなければならないのでそのタイミングが難しい。泳ぎながら少しずつ出せるようになったが、ものすごくストレスが溜まる。

2周目

状況としては1周目と同じであった。ただし1周25分泳いだ段階で、かなりの疲れを感じた。疲労感としては、プールの1500mの6割増しであろうか。前日は大会で1500mと前後に合計500m程度泳いだだけなので、前日の疲れは考えにくい。

水温が低いこと、潮の流れやうねりに対応しなければならないことが、プールの泳ぎよりも疲れやすくなる原因であろう。プール練習はこの点を考慮に入れて、同程度の疲労が感じられるまで泳ぐ距離を伸ばす必要がある。

桟橋からの距離を30m程度まで広げながら、中間地点まで泳ぐ。体内の暖炉(コア温度計)をチェックしたところ、すこし火が弱まっていたのでテンポを上げて泳いだ。ピアの先端のブイからは、1周目と同じように一番高いビルを目指して泳ぎ、係留されている船につながった鉄製のブイ状のものにぶつからないように注意した。

1周目で疲れを感じたため、2周目は泳ぎを大きく変化はさせずに、できるだけ同じようなテンポ、同じような水中の手の軌跡を意識して疲れを減らすことができた。

3周目

2周目終了時点で自分のからだや残り時間(駐車場の時間)を考えて、3周目もできると判断して続けて泳いだ。2周目に比べて疲労感が増えただけでなく、水中の手の動きも甘くなっていることがわかった。

前回のBtoB10kmで左手首がほとんど麻痺状態だったことを思い出して、キャッチの型を作ったら、手首には力をいれずにからだの回転で手を後方に動かすようにした。てこの原理である。これが巡航速度で泳ぐときの泳ぎ方になる。

桟橋沿いを北上するときは気力がかなり減っていたが、前方からやってきた2人組のご婦人達にはげまされてがんばれるようになった。この方達とは2周目のときに少し会話をしていたので、先方も覚えていた。ランニングでもそうだが、出会ったときに軽い挨拶をすると元気がもらえてうれしい。
(日本で走っているときはこちらが挨拶してもみんなに無視されてガッカリした)

中間地点をすぎたころから寒さが強くなっていたが、1周目、2周目と同じようにピア先端のブイまで回り道をして泳ぐことができた。泳ぎの力強さが減ったことで、潮の流れにより鋼鉄ブイまで2mの距離まで接近して一瞬パニックになったが、テンポを上げ、エッジをかけることで衝突を回避した。

最後はリラックスして泳いだが、そうするとたちどころに左に流される。もともと流されてスタート地点に戻ろうとしたので問題はなかったが、まっすぐ泳ぎたいときは力のゆる締めを意識し続けないとならない。


終わってみたら襟足がまたこすれて皮膚が変色していた。サイティングが原因であることは明らかで、ネオプレンのサーマルキャップが皮膚とこすれたか、単純に首の皮がたるんでこすれたかは不明である。水着がなくてもテーピングしないとならない。



練習後の気分:9(モチベーションマイナス状態で3周できた)




2015年7月24日金曜日

自己ベストを13年間出し続ける

マスターズ 長水路大会 1500m自由形


昨年から泳ぎを定期的に確認するため、マスターズの大会に再び出ることにした。ロットネストが終わるまではクロールの長距離(1500mまたは1650ヤード)のみ参加することにしている。

結果は22分55秒35で、昨年の22分58秒36よりも3秒速く、自己ベストを出すことができた。これでマスターズ大会に参加し始めてから13年間、出場する大会で必ず自己ベストを出している。45歳を過ぎてからは体力や筋力に衰えを感じているので、テクニックと戦略でカバーすることができる1500mは適している反面、一種目しか参加しないので自己ベストを出し続けることが難しい。

今回ベストが出た理由としては、以下が考えられる。

1)ラップ数を正確に数えることができた

一人で参加しているので、ラップカウンタ(数字の表示されたボード)を出してくれる人もいない。また最終50mの鐘はトップの人にしか鳴らしてくれないので、20mも離れていると聞こえない。これまで50mプールで1回、25ヤードプールで1回数え間違えて長く泳いだ他、スパートをかけようと思ったら終わりだったことも何回かある。

今回は4つの道具を順番に使い、さらにバリエーション化することでラップ数を数えることに集中した。1)エッジをかける、2)入水てこ、3)水中の肘の角度、4)フィニッシュてこの4つの道具を、100m毎に変えながら泳いだ。

またこの400mのセットを、1)2ビート、2)6ビート、3)2ビートで泳いで1200mとし、この段階でペースを上げて50mずつの200mのセットを1回、最後にラストスパートで100mとした。

リハーサルとして、プールの長さは25ydと短いものの、ラップ数と道具のサイクルを同じにして750ydを泳ぐ練習を今週2回行った。この予行演習が奏功して、ラップ数を冷静に数えることができた。

2)究極抵抗水着で持続力が向上した

以下のグラフは昨年の長水路の結果と比較したものである。昨年はスピードが次第に下がっていることが自分でもわかっていて対応できなかったが、今回はスピードが落ちていないことが実感できた。劣化率の推移を比べると、今日の泳ぎの方が一定していることがわかる。なお今回の方が第1ラップが1.3秒速いため、残りのラップの劣化率は高止まりしている。


この大きな原因は、究極抵抗水着による練習である。限られた時間の中で練習量を増やすために、練習時間の4割程度を究極抵抗水着による練習に割り当てた。泳いでいて遅くなるのはもちろんだが、水着をはずしたときに前のめり感が大幅に増える。ただし感覚で得られるほどスピードには反映しなかった(短距離では劇的には速くならない)ので、フォームと感覚の練習として位置づけていた。

実際に本番で泳いでみると、究極抵抗水着の効果は持続力に現れることがわかった。距離を泳いでもフォームが崩れにくくなることが原因であろう。

3)テンポを上げるよりもストローク数を減らすアプローチ

今週になってから、加速感を上げるためにストロークピラミッド+後半テンポ組み込みの練習を行った。よい結果が得られたので、今日はレース直前のウォームアップで同じことを行った。
10ストロークまで下げてから13ストロークまで上げ、次にテンポを1.10秒で13ストロークを維持し、テンポを1.00秒まで上げて13ストロークを維持した。

この8分後にはスタートできたので、ウォームアップの感覚がそのまま使えて最初の200mで2秒速くなった。

次にカイゼンすべきポイントは以下の通りである。

  1. ストローク数を数え続けることができなかった。第1ラップ37ストローク、次に40ストロークを数ラップ維持した後で42ストロークとなった。4つの道具の2セット目に入ったことからストローク数が数えられなくなり(ラップ数を優先したため)、それと共に0.5秒程度の遅延が発生している。おそらくテンポが落ちて、ストローク数も増えたのであろう。42を維持していれば8秒は速くなる。
  2. 残り300のスパートがかけられなかった。ラップ数を正確に数えることができ、残り300mもわかっていて、自分としてはスピードを上げたつもりだった。実際には残り200-100mで1秒遅くなっており、スパートしていなかった。
  3. 全ての力を使い切ることができなかった。これが一番問題であるが、終わった後もう1本できる感じであった。マラソンスイムの練習をしすぎていて、からだが無意識的に常に余力を残そうとしている。終わった後に完全燃焼するためにどうすればよいのか、今後の練習に取り入れる。

8月はアルカトラズ片道、アルカトラズ往復のレースがあり、さらに9月は初島熱海がある。スピードもそうであるが、低温で長時間泳ぐ練習、さらに5時間泳ぐ体力をつける練習に今後シフトする。



2015年7月21日火曜日

ゆっくり泳げば速く泳げる

スイム 2200yds (30分)


大会が近づいているので練習内容を量から質に変更した。

ストロークピラミッド 100×(12+4)

加速感が足らないと感じていたので、加速感を速攻で上げるためにストローク数を極限まで減らす「ローストロークピラミッド」を行った。

最初は15/16(第1ラップは15、残りのラップは16)からスタートして徐々にストローク数を減らし、最終的に9/10まで減らすことができた。テンポトレーナーは使わず、加速を上げることで10ストロークを維持した。

そこからは1ストロークずつ増やして13/14まで上げた。このストローク数がターゲットストローク数であったので、そこでテンポトレーナーを1.10に設定して2本泳ぎ、13/14を維持した。また1.05に上げて14/15で泳いだ。

タイムの変化を見ると、ピラミッドスタート時15/16では1分32秒、9/10で1分38秒、13/14まで上げて1分22秒となり、テンポトレーナー導入後は1分18秒、17秒、15秒、15秒となった。これまでの練習では、単純なテンポピラミッドでも1.00秒でここまでペースアップすることはできなかった。1分15秒は今年になってから最速のペースである。

このようにストローク数を減らして超ゆっくり泳ぐことで加速の力が身につけられる。あとはストローク数を増やしながら目標ペースを実現するストローク数まで上げ、その後にテンポトレーナーを使ってストローク数を速いテンポで維持すると、加速感を一気に引き上げることができる。

このペースで1500続けられるとは思わないが、加速を維持するための筋肉の使い方はわかった。長く(1時間以上)泳ぐときの泳ぎ方とは変えなければならないことを再認識した。


練習後の気分:8(狙い通りの効率の良い練習ができた)

2015年7月19日日曜日

流されるときの泳ぎ方

スイム 50分 2.6km 水温64.2F (17.8C)


今週水曜日にドルフィンクラブのメンバーになった。SF湾で泳ぐにはシャワーやサウナが必須であり、これまではビジターとして施設を利用していた。今後は訪問頻度を高めることができる。特に日曜日に泳げるのは大きなメリットである。路上のパーキングスポットも驚くほど空いていた。

今週金曜日に1500mの大会を控え、また午後にSteartのワークショップにゲスト参加することもあり、公園内2周で切り上げた。コンディションはこれまでのベストで、風もなく、うねりもなく、太陽も出ていて水温も高かった。

公園内を時計回りで泳ぐと、最後の4分の1が大きく流される。ただ浮いていると30秒で15mは流されるようである。やや流されているときはエッジをかけるだけでほとんど対応できるが、ここまで流されると追加の対応が必要になる。

1周目:ドルフィンクラブの桟橋を目指して泳ぐが、左に流されるので30m程度右側の建物の白壁を目標にして泳ぐ。泳いでいてからだが斜めになる感覚があるほど強い流れで、結局15m程度左にふくらんでしまった。

2周目:今度は桟橋に対して45度の角度にある高いビルを目指して泳ぐ。300mを泳ぐときに、目標から100m右を目指して泳ぐ感じである。40ストローク毎に立ち止まって、後のブイと桟橋と自分の位置を確認した。スタート地点のブイからまっすぐ泳いでれば、ブイ-自分-桟橋は一直線になる。自分の位置がずれていればそれだけ流されてしまったことになる。

このように3点観測を定期的に行った結果、桟橋の50m手前まではまっすぐ泳げていることがわかった。45度は完全に斜めの方向であったが、自分のからだが斜めに感じることはなく、自然に直進することができたようである。

8月のアルカトラズではさらに強い潮の流れが想定される。目標自体を大きく変えることで、結果として流されずに直進で移動することがわかったのは大きな収穫であった。

着替えた後にクラブの2階から泳いでいる人達を見ていたが、前に進むよりも横に流されるスピードの方が速く、誰もが流されていた。ただ最終的にこの流れは緩和されるようで、桟橋に近くなると前進する割合がどんどん増えてたどりつく状態であった。

今週末より土日に泳ぐようにして、さらに2周を3周に増やす。


練習後の気分:8(50分程度なら震えも起きないようだ)


2015年7月14日火曜日

加速を染み込ませる練習

スイム 5000yds(90分)


日曜日の10kmスイムでは、襟元にバンドエイド、さらにKTテープを貼って臨んだものの、先週の擦り傷の治りかけが新しい擦り傷になってしまった。これはオーストラリアで体験しているが、やはり痛い。水温は16度あれば下だけの水着でも60分は問題なさそうである。来月のアルカトラズスイムまで何回か海で泳ぐ機会を作り、水着だけで90分いられるか実験してみる。

プール練習のコンセプト

長水路1500mを来週に控えているので、泳ぐ量を確保しながら加速を染み込ませる練習にする。
具体的には、
  • 究極抵抗水着を使ったフォーミング練習:2km
  • テンポ一定でストローク数を維持するディスタンスピラミッド
  • テンポ一定で途中で加速する加速インターバル
  • 加速感を維持しながらのロング

200yds×10@1.10秒-1.25秒-0.95秒+究極抵抗水着

フォーミング練習としてテンポピラミッドを実施。得たい感覚が得にくい状況の中で、フォームを変えながら感覚を引き出す練習である。

  1. 正しい入水位置と角度で入水からエッジをかける
  2. 入水のてこを使って入水を加速する
  3. 胸の下の手の水中動作において、肘の角度を維持してからだの下を通るようにする
  4. 前で手を伸ばす動作をてこにして後で水を切ってフィニッシュ
を50ydsずつ意識したが、世界記録並のスピードで泳いだ日曜日以来ということもあり、「全く」前に進まない。まず12で前のめり感と安定感を上げてから、34で水抱え感と加速感を上げるようにしたところ、後半は水に乗る感覚が増加した。

1000yds(100, 200, 300, 400)×2@1.10秒、1.05秒

16ストローク維持(最初は15ストローク)でディスタンスピラミッド。無理に加速するのではなく、ラクに16ストローク維持できるように上記1~4を強調して加速した。

100yds(N, N-1, easy, easy)×5@1.00秒

1ラップ目は普通に泳ぎ、2ラップ目は1ラップ目よりストローク数を減らす加速インターバル練習。最初はN-2でやろうかと思ったがN-1で妥協。本数を重ねるにつれてラクにN-1が達成できるようになってきた。

500yds(N+1)@1.00秒

気分的には加速インターバルで練習終了にして、イージーペースで100泳いで終わろうとしたところ17ストロークでラクに泳げることがわかったので、どのくらい維持できるかやってみた。結果としては450ydsまで17ストロークでラクに泳げた。

今回の練習では、
  • フォーミング練習で感覚と動作をつなげる
  • ディスタンスピラミッドで加速の持続力を上げる
  • 加速インターバルで加速のスイッチを入れるタイミングを作る
  • ロングで加速の感覚が維持できることを確認する
という流れで、加速を染み込ませることができるようになった。

練習後の気分:9(途中でやめようかと思ったが90分練習できた。首が痛い)

    2015年7月12日日曜日

    10km を100分で泳ぐ

    Bridge to Bridge 10 km Swim


    Water World Swimが主催するイベント「Bridge to Bridge 10km」に参加した。

    これはサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジからベイブリッジまでの約10kmを泳ぐもので、レースではなくタイムや順位のつかないFun Swimとして位置づけられている。サンフランシスコ湾では長距離のスイムとなるので、秋に開催されるレース形式の同種イベントや、来年のドーバー海峡横断に挑戦する人達、さらにアルカトラズスイムを複数回経験している熟練者達20名弱が参加した。中には12歳と10歳ぐらいの小さな姉妹が参加していて、「本当にできるの?」と疑問に思ったが、アルカトラズスイムを11回と8回経験していると聞いて恐れ入った。


    実際に泳いだコース

    ゴールデンゲートブリッジはサンフランシスコの北側に位置し、太平洋の入口に近い。従って上げ潮のときには西から東側にあるベイブリッジまでは強烈な潮の流れが発生する。通常であれば3時間半かかる10kmのスイムを、この潮の流れを使って2時間弱で泳ぎ切る。

    前半4分の1:アルカトラズを目指す

    船でゴールデンゲートブリッジまで行き、そこからスタートするのであるが、下から見上げるブリッジのすごさに圧倒された。23年ベイエリアに住んでいるが下から見るのは初めてであった。

    ブリッジからそのまま海岸沿いには泳げない。ゴールデンゲートパーク北側に、巻き込む流れがあり前に進めなくなるのである。このため前半4分の1はアルカトラズを目指して泳ぐ。最初は船の往来に伴う大きなうねりがあり苦労したが、エッジをかけることで安定して前に進むことができた。

    中盤まで:トランスアメリカビルを目指す

    アルカトラズに随分近づいたけど、このまま行っていいのかと思っていたら、先頭集団がコーチのボートに停められていた。私もその集団に追いついたとき、「これから方向を変える。トランスアメリカビル(角錐型のビル)を目指せ」と言われた。本来はその手前でアクアティックパークに100ヤード近くまで接近しなければならなかったのだが、実際には潮の流れで離れてしまったようだ。

    フェリーの往来もあり、ここまでが最もコンディションが悪かった。大きなうねりが四方八方から押し寄せる感じで、ロットネストの悪夢を思い出した。しかし当時と今では練習量も経験も異なる。スイッチのタイミングをずらしてテンポを上げると共に、入水の加速を上げることでうねりに強いモードに変えて泳いだ。

    中盤~4分の3まで:ピア沿いに平行移動

    当初はアクアティックパークに近い桟橋まで接近してからピア沿いに泳ぐはずだったが、近づいた番号を見たら39だった。ピア39は観光名所として有名で、野生のアザラシが多数生息する。

    泳ぎながらピアの壁を見ると、自分が前に平行移動しているのがよくわかる。何もしなくても1秒で自分の身長は動いているようである。あまりにも気分が良く、見物している人に思わず手を振ってしまった。自分の頭の中ではピア39は3分の2まで達しており、このままで行けば楽勝と思っていた。

    勝手に前に進むので、スイッチのタイミングを変えてテンポを落とし、水中の軌跡を維持しながらラクに手が動くように調整した。

    後半4分の1:流れが強く最もきつい

    ピア39のときにすでにベイブリッジの第1タワーは見えており、もうすぐだと思っていた。ところが残り4分の1になってからが、なかなか近づいてこない。ついにはブイが見えたが、サイティングするたびに右側に移動している(=自分が左に流されている)。以下のような段階で方向を修正した。
    1. 右側の入水場所を5cm外側にする→効き目なし
    2. 右手の伸ばす方向を10cm外側にしてエッジをかける→効き目なし
    3. 左手の入水場所を中央より右側にして、ブイをクロスするように入水する→やっと効き目出る
    この時点で目標物もブイから50m右にある建物に修正し、なんとかグループの一番右側で泳ぐことができた。他の人達はかなり外側に流されたので、結果として私が先頭集団に再び追いつくことができた。

    100分余りでゴール。ゴールの目印は船上にあるブイで、船にタッチしてゴールというのが変わっていた。

    寒さ、疲れ、給水

    水温は華氏62度(摂氏16.7度)で、この時期としては普通である。3月末より毎週1回SF湾で泳いでいた成果が出て、後半少し震えた程度で寒いと感じることはなかった。摂氏12度のときは入水時に全身を刺すような痛みが発生したが、今回船から飛び込んでも何ともなかった。

    また前日ホテルにチェックインしてから、水着(ラッシュガードなし)で軽く泳いだのが良かった。水温は65度近かったが、うねりも適度あり、潮の流れは相変わらず速かったのでよい予行演習になった。

    疲れについては左手の手首の感覚が薄くなっていた。入水時に手を緊張させすぎているようで、ビデオを見てもそれがわかる。今週から修正する。また今回100分を泳いだが、80分ぐらいから疲れが顕著になっていた。普段の練習で80分ぐらいしか泳いでないことが原因であり、5時間泳ぐ初島熱海を考えると、練習時間を伸ばすか、1日2回練習する必要がある。

    給水については今回水筒ブイを持参して泳いだ。水筒として吸い込みタイプのソフトフラスクを用意し、水中での給水を試みようとしたが、結局給水休みすることなくゴールしてしまった。普段より素早い給水ができるように練習する必要がある。


    100m世界記録を上回るスピード

    平均速度は100mあたり1分3秒で、非常に速かった。速度の変化を見ると、100mの世界記録である46秒91を上回るスピードで泳いでいるときもあり、全体として普段の4割速い速度であった。

    泳いでいるときはそれほど速いとは実感しなかったが、中盤で振り返って霧のかかったゴールデンゲートブリッジが見えて、もうここまで来たのかと思った。




    以下がロンドン五輪10kmマラソンスイムのタイムである。私は彼らより速かったことになる。

    Oussama MELLOULI TUN 1:49:55.1
    Thomas LURZ GER 1:49:58.5
    Richard WEINBERGER CAN 1:50:00.3

    経験値が上がった今回のスイム

    低温、非常に強い潮の流れ、船が通る度に発生する大きく複雑なうねり、刻々と変わる目標物など、オープンウォータースイムで発生する全てのことが一度に体験できるという、非常にお得なスイムであった。

    これからアルカトラズスイム(去年勘違いして申し込んだ分)やアルカトラズ往復、さらに初島熱海を控えているので、さらに精進して自分の泳ぎを確立する。


    スイム後の気分:10(とても満足)



    スイム終了後の帰りの船から(ベイブリッジ)


    ゴール後にStuart McDaugal TIコーチと


    2015年7月8日水曜日

    キックに関する考察

    ●6ビートを検討することになったきっかけ

    これまでバタ足は疲れるものとして2ビートキックを磨き、スナップ型のキック(フリックスタイル、別名「Shinji-style」)を生み出した。ムチがしなるように素早く足を動かし、動かした後にホームポジションに戻すことで抵抗を減らすスナップ型のキックは、この10年で地位を確立したと言える。

    しかしスナップ型のキックの振幅を抑えたまま(かかとを上げずに)からだの回転動作につなげようとすると、ひざと足首をひねる動作が加わり、足がつる原因になる。足がつるのを恐れてキックをしないと、海ではうねりに負けてしまう。

    ロットネストでうねりに翻弄されている自分の泳ぎを見たことで、うねりの中でもからだを安定させる6ビートキックの必要性を感じた。

    ●2ビートキック学習の弊害

    2ビートキックは手の入水動作(あるいは水中のプル動作)に合わせて足を動かすだけなので、回数も少なくカンタンで取り組みやすいとの印象を与える。

    しかしバタ足が苦手でスケーティングキックやスイングスケートを練習していないと、2ビートのときの足の動かし方が陸上と同じ「蹴る動作」となり、かかとを引き上げることで水の抵抗が急激に増えるだけでなく、前後左右のバランスも悪くなる。この結果足の甲だけでなく足のすねも使って水を下に押す動きとなり、上下動も大きくなる。

    2ビートキックでバランスが崩れる場合、まず6ビートで下半身を安定させることが優先される。このように指導上の観点からも6ビートを導入する必要性を感じていた。

    ●水中の足の動作の本質

    バタ足=6ビートキック(厳密に言えば違う部分がある)を学ぶにあたり、最初に使ったのが小さなフィンである。足の周囲を3cm程度大きくするもので、推進力を強化する用途ではない。しかもゴムが頻繁に外れるので、思い切って足を動かすことができない。

    このフィンを使っているうちに、「足の甲で水を支える」感覚がわかってきた。これは水中の手の初動と同じである。足の甲で水を支え、それをてこにして膝を曲げ伸ばしすると、非常にラクに足を動かすことがわかった。

    このような足の動かし方がわかると、フィンを外しても「スカスカ」にはならない。足はその場にとどまっているだけなので、フィンがなくてもとどまることができる。ひざを曲げ伸ばしすると「結果として」足の甲で水を押すことができるようになる。

    さらにアンクルストラップで足首を固定させると、足の動作の本質が見えてきた。足首が支点となる「てこ」の動きである。従って足首は動かない。アンクルストラップで足首がしばられていても、キックができることがわかった。最初は足の甲を力点にしていたが、ひざを伸ばす動作を力点にすることで足の甲で水が押せることもわかった。ひざから足首までの距離が長いので、ひざに小さな力を加えることで足の甲で大きな力を生み出すことができる。

    ●2時間続けられる6ビートキックを目指して

    ひざの曲げ伸ばしだけを使えばラクな6ビートができる。しかし蹴ることを意識したり、あわてて足を動かすとひざが曲がったままになったり、伸びたままになったりする。同じ時期に自転車を始めたこともあり、腰の使い方でひざをリードできないか考えたところ、腸腰筋を進行方向に引っ張るとひざが曲がることがわかった。今度は腰が支点となる「てこ」の動きである。骨盤を進行方向にゆらすことで腸腰筋が動き、結果としてひざも曲がる。曲がったひざは素早く伸ばすことだけを意識すれば足の力をほとんど使わずに6ビートができる。

    このように腰-ひざ-足首の連携により、ラクで長時間続けられる6ビートキックが完成した。このキックの主目的は下半身を上げて安定させることである。ウェットスーツを着用してもともと足が上がっているときでも、うねりに負けないエッジを効かせた姿勢を維持するためにこのキックが必要になる。なお競泳のキックのように、このキック単体による推進力は期待していないが、そのようなモードも研究すれば対応可能であろう。

    これまでの最長実施時間は3時間である。2ビートキックでは1時間程度で足がつっていたが、2時間半までは足をつらないでキックすることができた。また足がつりそうになっても6ビートであれば動作をゆるくして続けることができるのもメリットである。時間は1時間程度であるが低温スイムでは威力を発揮している。



    ●6ビートキックと2ビートキックの使い分け

    2ビートのメリットは、
    • 足を動かす回数が少ない。
    • 足とからだと手の動作をつなげやすい。
    • 力を入れるタイミングがわかりやすい。
    である。6ビートキックを磨く過程で2ビートキックの足の動かし方もカイゼンしたので、今では場面に応じて使い分けている。
    • うねりのないプールでは2ビートのみも可能。ただし加速のために力を入れようとすると足に負担がかかるので、息継ぎ後の入水など力を入れがちな場面であえて6ビートを瞬間的に入れて力を分散している。
    • 低温スイムでは間違いなく6ビート。
    • うねりの少ない暖かい海では2ビート。潮の流れが強くなり、エッジをかける必要が出てきたときに6ビートに切り替える。
    • うねりやチョップのある海では6ビート。
    • 6ビートを連続して使用する場合、時々2ビートにして力を入れるタイミングを確認し、6ビートにアクセントを付けるようにする。
    これまでは2ビートキックの蹴り幅の極小化を目指していたが、キックの目的が多様化したことで2ビートも6ビートも使いこなせるようになった。今後は9時間まで延長できるように、さらに6ビートの効率化を目指すとともに、2ビートも磨きをかける。




    2015年7月4日土曜日

    32度の海から16度の海へ

    スイム 85分

    サンフランシスコのBridge to Bridge (15km)を翌週に控え、サンフランシスコ湾で練習した。
    グアムでは32度(場所によってはそれ以上)の高温で悩まされたが、水温半分のサンフランシスコでどのようになるのか心配であった。

    気温:16度、水温:16度

    これまではラッシュガードを着用していたが、今回は翌週使用する水着(バイオラバースイム)を着用した。グアムの半分の水温ということで3月末のようなパニック状態になるかと思ったが、前回サンフランシスコで泳いだときよりも4度近く高かったこともあり、2分半で通常モードに戻った。場所によっては「暖かい」と感じる場所もあり、グアムでの高温スイムの影響はほとんどなかった。

    むしろグアムで泳ぎこんだ成果か、スイッチのタイミングを変えて水中軌跡を浅くすることで速いテンポにすぐにシフトアップすることができた。ゆっくり泳ぐ、速く泳ぐを繰り返すことで運動強度の状態も確認することができた。

    ラッシュガード+ロングジョン水着に比べて、バイオラバースイムは確実に保温効果が高い。給水時に姿勢を変えるときに、暖かい水が体の表面を流れるのを感じた。水が逃げずに温まっている証拠である。背中のファスナーを締めたときにテーピングした位置から水着が動いたため、首回りに擦過傷ができてしまったが、今後は首も含めて(サイティングで水着に接触して擦り傷になった)テーピングする。

    スイムエリアの2周目から潮の流れが強くなり、水筒ブイにつかまっていると1秒間に2m程度移動するぐらい急流になった。小さなブイが設置されていたのでブイ沿いに泳ごうとしたが、右から左に素早く流されてなかなかブイ沿いに泳げない。進行方向に対して60度程度からだを傾けてようやくブイの右側においつく状態である。

    グアムでも経験したが、非常に強い横向きの流れではブイを目指して泳げない。ブイから離れた場所を目印にして、からだを傾けながら泳ぐことになる。潮の流れを感じて目標をずらす技術を磨く必要がある。

    2周した後に直線コースを往復して終了した。時間は85分と過去最長であったが、足がつることもなく(限りなくつりそうになった瞬間はあったが)、寒さに震えることもなく泳ぐことができた。終わった後もそれほど震えずに済んだ。これまでより4度高いだけで大きな違いである。

    次回はレース前日に夕方軽く泳ぎ、レース当日を迎える。ボートスタート、ボートゴールなのでどのような手順になるか不明だが、なるようにしかならないので出来る限りの準備をする。




    2015年7月1日水曜日

    2週間で50kmを泳いだグアムキャンプ

    先月のグアムでの滞在は非常に充実したものになった。今回は日本語キャンプ、自分の練習、韓国語キャンプ、自分の練習と限られた時間を効率良く使って泳ぐことができた。

    前回のキャンプでは39度の熱を出してお客様にも迷惑をかけてしまった(それでも1日6km以上泳いでいたが)ため、今回は気合いを入れてキャンプに臨んだ。

    ○日本語キャンプ

    リピートの方8名様、新規の方5名様という構成で、近年では新規の方が多かった。

    3月から練習してきた「エッジをかける」「疲れない6ビート」「スイッチのタイミングを変えることによるテンポのコントロール」「スカリングに基づく水中動作」などのOWS向け技術をお客様に提供する初めての機会であった。一度にマスターするには難しい技術を、単純な動作で構成することで誰もが理解し、習得できるようにした。

    特に6ビートは新鮮だったようで、力の入った2ビートよりもリラックスした6ビートの方が足が浮くことや、下半身が安定するため上半身の推進力を増やすことができることを理解し納得して頂けた。

    また水中の手の動きについても、肘の角度を維持しながら「かかずに」リラックスして素早く動かす方が加速が上がることも理解して頂けた。

    これまでの6月のキャンプよりも泳いだ距離はかなり増えたが、みなさんラクにこなしていたのが印象的であった。

    ○韓国語キャンプ

    韓国TIコーチの安さんの尽力により、韓国語のキャンプを当初より1年早く実現することができた。参加者はコーチ、通訳を含め10名で、最初のキャンプとして丁度よい規模であった。

    これまで韓国で行ったワークショップやコーチ研修とは異なり、私がディレクターとなって全ての管理をする必要があったが、多少の民族性の違いを除いてはみなさん熱心に、かつ非常に協力的であったのでスムーズに運営することができた。

    潮位の関係でOWSセッションを午後4時から開催することになり、朝行うプールセッションとの合間に長い空き時間が発生した。この時間を使ってプール練習することができたのは大きい。

    最終日は午前中のプールセッションで終了する予定であったが、全員深夜に出発ということで急遽夕方に4kmOWSを実施した。潮の流れが強かったもののOWS初心者も含めて全員完泳した。

    ○自己練習

    朝の5kmランは体重増のため1回目は2番目の上り坂、2回目は3番目の坂でリタイア(歩きに変更)した。

    去年フルマラソンに備えて練習していたときには2周完走していたことを思い出し、3回目は上り坂でひざを伸ばすために筋肉を使ったところ完走できた。4回目もきついながら完走できた。

    スイムについては量と質の両方を狙うことにした。量については毎日6~7kmを泳ぐことにし、質についてはテンポ1.0秒で40ストロークを目標にした。

    • OWSでは4km泳を2回実施した(うち1回はソロ、1回は韓国語キャンプ)。前半は比較的穏やかであるが、パシフィックスターホテルからの折り返し後500m程度は潮の流れと風向きが異なるため強いチョップが発生した。うねりというほどではないがエッジをかけて6ビートで泳ぐことで姿勢を安定させることができた。
    • プールでは3~4km程度を毎日泳ぎ、中間のメインとして50×100m(2分インターバル)、最終日のメインとして10×1000m(レスト45秒)を行った。100m泳の平均タイムは1分45秒で、レストは15秒であった。前の泳ぎを反省し、次の泳ぎの目標を定めるためには15秒が必要である。従ってディセンディングを意識した泳ぎを続ける(結果としてタイム一定にする)ためにはインターバルとして2分を要する。
    • 質についてはストローク数を減らす練習をまず行い、32~34ストロークで長距離を泳げるようにした。次にテンポトレーナーを使って1.20秒から次第に速くしていったが、ストローク数の増加はできるだけ抑えた。その結果50mではテンポ1.0秒で36ストロークを達成した。100mでは80ストローク未満として目標ペース1分30秒を達成した。
    結果としてグアム滞在2週間で約50kmを泳ぐことができた。レッスン後にプールで朝3km泳いでから海で夕方4km泳ぐのはなかなかつらいものであるが、天候もよく天敵の魚もおとなしかったので無事泳ぐことができた。

    ○日本代表と泳ぐ

    後半からは日本代表の合宿と重なり、メダリストの練習風景を観察することができた。1日2回、1回2時間程度練習するので泳ぐ距離は1日10kmを超えるのであろう。ゆっくりしたテンポ(1.1~1.2秒)で長く泳いでいるのが印象的であった。スプリント練習やインターバル練習も午前中はほとんど行っておらず、コーチと泳ぎを確認することが中心であった。かなりきつい練習で朝から飛ばす大学の水泳部の練習とは対照的であった。

    クロールのストローク数は34~38で、スイッチのタイミングもTIと同様である。隣の競泳用プールで一緒に泳いでみたが、ストローク数は変わらないもののあっという間に着いていたようである。キックやプルによる推進力が大きいのであるが、機会があればさらに観察して、大人の水泳に使える技術を見つけたい。