2016年6月20日月曜日

サンフランシスコでマラソンスイムを泳ぐ

スイム 約10km


サンフランシスコ湾で開催されたマラソンスイムイベントに参加した。2週間後に同じ距離をレース形式で泳ぐため、今回はテストスイムをメインの目的とした。

○イベント詳細

  • サンフランシスコ湾のゴールデンゲートブリッジを起点、ベイブリッジを終点とする。距離は6マイル(9.6km)
  • 強烈な潮の流れで、通常の倍のスピードで泳ぐことができる。
  • 水温は16.7度で、比較的暖かい。
  • 参加者は9名であった。2週間後のレースは50名が参加。
  • ウェットスーツは任意。私は着用しなかった。

○準備


水温16度で100分は泳ぎ続けなければならないので、体力、ペース維持力と温度抵抗力などが必要である。
  • 体力:1回の練習で泳ぐ距離を3000ヤードからスタートして、毎月1000ヤードずつ追加した。現在では5000ヤードを週4回プールで泳いでいる。1回の練習で実質泳ぐ時間は1時間10分(練習時間は1時間30~40分)。
  • ペース維持力:ペースによるインターバル練習を取り入れ、リラックスペースで4×1000まで泳げるようにした。完泳を目的としたフェーズではリラックスペースによる距離増が主目的になる。
  • 温度抵抗力:サンフランシスコ湾でのスイム練習を4月下旬から開始。最初は40分、海洋公園内1周+αからスタートして、周回数および滞在時間を増やし4周、1時間45分まで延長した。イベント前日も軽く1周+αで低温に慣れるようにした。

○最初の3分の1(フォートメイソンまで)

  • 船でゴールデンゲートブリッジの下まで行く。コース説明の後スタートだったが、貨物船通過のため20分近く待機することになる。通過と同時に海に飛び込んでスタート。
  • 9人だったのでバトルもなく、アルカトラズ島を目指して泳ぐ。天気は晴れ、うねりも小さく絶好のコンディションでスムーズに泳ぐ。からだが冷えるのを防ぐため一番最後に飛び込んだので、最後尾からスタート。
  • あるスイマーに追いついたが、キックの様子からTIコーチのスチュアート(本職はCGでアカデミー賞受賞履歴あり)とわかった。昨年は同時にゴールしたので、経験もありスピードも同じことからドラフティングすることに決めて少しペースを落としてついて行った。
  • スチュアートがときどき左右に動き、そのたびに私の手が彼の足やからだに当たってしまう。申し訳ないと思うと同時に、「なんでそんなにふらふらしているの?」と思ったが、こういうときは半分は自分がふらふらしているので考え直してエッジをかけたり、サイティングの頻度を上げたりした。

○次の3分の1(ピア39まで)

  • 船が通り過ぎたのか何なのかはわからないが、急に大きなうねりが発生した。リカバリーの手を大きくして入水場所を遠ざけてうねりに対応する。
  • またうねりを過ぎたときにからだが回っている可能性があるが、うねりの谷ではサイティングできない。そこで次のうねりの山で確実にサイティングして方向を確認した。
  • うねりの途中ではからだが斜めに立っているので水中動作ができない(手を動かすとからだが不安定になる)ことがわかった。このため手を入水してから伸ばすキャッチアップを使ってみたところ安定して手を動かすことができた。テンポが遅くなるので有効性については今後検証する。
  • 昨年はアクアティックパークの防波堤沿いに泳いでピア39まで進んだので、距離感がよくわかった。今年は100mは沖を泳いでいたので、場所の感覚がまったくつかめなかった。
  • 40分を過ぎた頃から震えだしたので、テンポを上げた。キックを強くすると足がつる可能性があったので、膝の曲げ伸ばしだけを意識して素早く行う。

○最後の3分の1

  • うねりが次第に大きくなり、立っているのか横になっているのかもわからない状態になってきた。おそらくロットネストではこのような状態で我を失ったのだろうと思い出しながら、エッジをかなり効かせて泳ぐようにした。
  • 入水直前に水中の手でキャッチして支えを作り、加速して入水する。水中で支えを作らないとてこが使えず入水前加速になる。かならずてこが使えることを確認する必要がある。
  • また入水後には伸ばした手に体重をかけて斜め姿勢に重みを加える。左右に振られても姿勢を維持してグライドするために重要な技術である。
  • しかし低温で奥歯がカチカチ言い出して、震えが止まらなくなると意識も集中できなくなる。船の位置を考えると本来はピア沿いのコースを取るべきであったが、そんなことも考えられなくなっていた。
  • 最後の300mは目標もわかり、ペースを上げてゴールした。タイムは1時間44分で昨年より4分遅かった。

○分析と今後の戦略

  • 心拍モニターを装着していたが、残念ながらデータを取得することができなかった。どこまで心拍数が上げられるのかは、次回チャレンジしたい。
  • 後半3分の1はもがきながら進んでいたが、スピード的には100m48秒でオリンピック選手並の速さで移動していた。意識と実態がこれだけ離れているは初めてである。
  • 大きな目標物を切り替えながら泳ぐ必要がある。最初はアルカトラズ島、博物館を越えたらコイトタワー、ツインタワーが見えたらアクアティックパークの防波堤、戦艦が見えたらピア39など、横に見えるものを確認しながら前の目標を切り替える。
  • 今回はライフガードが1人ずつ付いたが、私の担当の方がボードにカメラを装着して私の泳ぎをずっと撮影してくれた。この泳ぎを分析して、次回のレースに活かす。




2016年6月2日木曜日

インターバル練習の活用

スイム 5050yds

心拍モニターを導入してから様々な仮説を検証することができて、クロールの完成形練習の幅が大きく拡がっている。なかでも長い距離を速く泳ぐための練習方法については、かなり詳細に組み立てられるようになった。

効率の良い泳ぎをフォームで作ることは当然であるが、それに加えて高い運動強度(心拍数)をペースを損なわずに長時間維持することも、長い距離を速く泳ぐためには必要である。これまでわかったことは、


  • 続けて泳いだ場合、心拍数が上がるのに時間がかかる。速く泳ぐための練習帯である「最大心拍数の80%」に達するには500ヤード泳ぐ必要がある(初回セット。2回目からは半分)。
  • 陸上とは異なり、水泳の場合泳ぎを止めた瞬間から心拍数が下がり始める。下がる割合は30秒で10%、45秒で15%である。
これらの情報に基づいて、きつくない運動で心拍数を恒常的に上げる練習を考えるため、ペースの計測からゼロベースで見直した。

○2つのペースの計測

現時点の泳力や心肺機能を使いながら、劣化を最小限にするペースを「基本ペース」と呼ぶことにする。また目標の距離をラクに完泳することのできるペースを「リラックスペース」と呼ぶことにする。これに目標の距離を目標のタイムで泳ぐ「目標ペース」を加えた3種類のペースが、ペース練習において必要となる。

・基本ペースの計測

基本ペースを決めるにあたって、以下を検討した。
  • 目標の距離の50%以上を合計で泳ぐ。
  • できるだけ速い状態を作るために、何回かに分ける。
  • 心拍数が高い状態を維持するために、200yds以上泳ぐ必要がある。
  • 心拍数の低下を防ぎながら速いペースを維持するために、30秒の休憩は必要である。
  • 複数回を連続して泳いだときの変動幅は劣化率程度であるべき。
これらより泳ぐ距離は300ヤード×3として、休憩30秒、変動幅は15秒とした。劣化を考えたなかでは最も速いスピードの維持を意識しながら泳いだ。

測定の結果3本の変動幅は9秒(4%)、平均のラップペースは21.3秒となった。

・リラックスペースの計測

リラックスペースは、目標の距離をラクに泳ぐなかでは最も速いスピードである。テンポを速めに保ちながら水中動作をゆるめるか、テンポを遅くして加速は維持することでこのペースを実現する。

泳ぐ距離は200ヤード×2として、休憩30秒とした。ラクに泳ぐということで劣化はしないと考え、劣化率は考慮しなかった。

測定の結果平均のラップペースは22.5秒、切り上げて23秒とした。

計測結果より、ラップあたりのペースの違いは以下の通りとなる。

  1. 目標ペース:20秒
  2. 基本ペース:21秒
  3. リラックスペース:23秒

○インターバル練習へのペースの導入

水泳のインターバル練習は、泳ぐ時間+休憩時間を定めて複数回泳ぐ。1回あたりの強度を上げることで、全体の距離を続けて泳ぐときよりも強度を上がるとされる。

今回はまずリラックスペースでインターバル練習を行った。リラックスペースを少し上回るペースを考えて泳ぐ時間は3分、休憩時間は30秒として3分30秒のインターバルで10本泳いだ。以下のグラフの後半の山10個分が相当する。



各セットの平均心拍数は148で、運動強度は86%であった。これは1000ヤードを続けて泳いだときのテンポ1.15秒の心拍数より高く、17ストローク維持の心拍数より低い程度である。トータルで泳ぐ距離は倍でありながら、泳いでいるときのきつさは一番ラクであったことを考えると、リラックスペースで繰り返し泳ぐ効果は高い。

興味深いのがこの後に続けた5×100(基本ペース+30秒インターバル)である。ペースが2秒速くなったにもかかわらず、平均心拍数は148と同じであった。最高心拍数も153~157で200のインターバルとほとんど変わらない。

これまで21秒ペースで泳ぐときの平均心拍数は155を超え、最高心拍数は168まで達していた。これまでに比べると、きつくないのにスピードは速い印象であった。効率の良いスピードアップを実現することができた。

以下が考察である。

  • インターバル練習では劣化しないペースで泳ぐ。劣化しては心拍数も変わるため意味がない。
  • 心拍数が10%ダウンする程度の休憩時間(ラップペース程度)にする。
  • 1回に泳ぐ距離は心拍数が十分あがる200を最低単位とする。
  • 合計距離は目標距離を上回るようにする。
  • インターバル練習のあとに基本ペースの練習でラクにスピードアップできることを確認する。
基本ペースとリラックスペースを、今後の練習メニューの組み立てに導入する。


練習後の気分:10(得たい結果が得られた)