2016年8月5日金曜日

効率的で効果の出るスピードアップ練習

心拍計を用いて練習するようになり、練習内容と心拍数を比較することで様々な発見があった。今回は新しい知見を含めて、スピードアップを目指すためのステップと練習方法について整理する。

デザインのステップ1:現在位置を知ってから目標を定める。

このステップの目的は、達成可能な目標を決めることにある。シーズン(3~6カ月)のスパンで考えると、5%程度のスピードアップは実現可能性が高いが、10%は無理であろう。練習時間や練習環境(プールの混み具合、計時可能かなど)を考慮しながら、現在のタイムより3~5%速いタイムを目標として定める。

デザインのステップ2:目標のペースの泳ぎをデザインする。

このステップの目的は、目標を達成するためのペース(100mあたり、またはプールの長さあたりのタイム)を設定し、そのペースを実現するためのストローク数とテンポを決めることにある。

ペースの算出においては目標のタイムを単純にラップ数で割るのではなく、5%~15%の劣化率を見込む必要がある。例えば1500mを25mプールにおいて30分で泳ぎたい場合、25mあたりの目標ペースは30秒ではなく、劣化率10%とすると30÷1.1=27.2秒になる。初心者の劣化率は10%台後半であり、泳ぎが効率良くなるにつれて5%程度まで改善される。

目標のペースが決まったら、そのペースを実現するためのストローク数とテンポの組合せを決める。ターンとプッシュオフに要するカウントを5として、(ストローク数+5)×テンポ=目標のペースになるように組み合わせる。

このためにはまず現在の自分の泳ぎが何ストロークでテンポはどのくらいなのかを知る必要がある。ここでも現在位置が必要になる。概ねテンポは0.2秒速くすることは可能であり、ストローク数は1減らすことができる。それ以上テンポを速くしたり(空回りせずに)、ストローク数を継続的に減らすためには長期間の練習が必要である。

練習のステップ1:問題となる箇所を見つけてカイゼンする。

このステップの目的は、「目標のペースで泳ぎ続けることが可能な泳ぎ」を作ることである。目標のペースは現在泳げるペースよりも速いので、「テンポを速くする」か「ストローク数を減らす」のいずれかまたは両方を実現しなくてはならない。

従って今の泳ぎ方において、テンポを速くしたり、ストローク数を減らしたりして泳ぎ続けるための問題点を見つける必要がある。テンポを速くする場合、「空回りする(ストローク数が増える)」、「テンポにおいつかない」、「疲れる」などの問題が発生する。またストローク数を減らす場合、「ストローク数が減らない」「疲れる」などの問題が発生する。これらの問題を解決するために、手の水中の動き、スイッチのタイミング、体幹の回転のキレなどを確認して設定してストローク数とテンポでより長い距離を泳げるようにする。

練習としては道具箱やフォーカルポイントを使って泳ぎを観察し、基準値に達していないセンサーや感覚を上げることが中心となる。ドリル練習もここで行う。

練習のステップ2:ストローク数とテンポのコントロール力を増やす。

このステップの目的は、泳ぎを途中で変える技術を身につけることである。同じ意識で泳いでいると時間の経過と共に必ず遅くなるので、より速く泳ぐディセンディングを意識して、その意識を形に表すために泳ぎを変える必要がある。具体的にはストローク数とテンポを変えて泳げるようにする。

  • ストローク数を減らす/テンポを遅くする→加速を上げる
  • ストローク数を増やす/テンポを速くする→空回りを抑えてなめらかさを増やす
練習としてはストロークピラミッドやテンポピラミッドが中心となる。また持続力を高めるためにディスタンスやレストを変化させる練習も行う。

練習のステップ3:ペースを維持する。

練習の仕上げとして、ペースをコントロールする練習を取り入れる。目標のペースで目標の距離を泳ぐことができれば目標は達成できる。ここでは、

  • リラックスして泳ぐペース
  • 目標のペース
の2つを基準として、リラックスペースで泳ぐ距離を増やしながらペースを速くして、最終的には目標のペースでできるだけ長い距離を泳げるようにする。


以上のように、まず目標達成のための自分の泳ぎをデザインして、次に問題を解決し、さらにコントロール力を高めたうえで目標ペースをより長い距離維持できるようにすれば効率良く目標を達成することができる。