2014年10月28日火曜日

速く長く泳ぐには前のめり感が7割

 香港、韓国巡業が終わり、残すところ週末の福岡場所となった。さらに気合いを入れて臨みたい。

 さて巡業の合間の稽古では、ランとエンドレスプールのスイムが基本である。今日は6km走りエンドレスプールで約4km泳いだ。エンドレスプールではテンポピラミッド8x400ストローク@1.15~1.30~1.05秒とした。

・1本目@1.15秒 

この3日間はほとんど泳いでいないにもかかわらず肘や肩がいきなり痛み出した。おそらくエコノミー症候群(のようなもの)であろう。行きも帰りも満席であった。エコノミー席は肘掛けの共有の仕方に隣席の方とのあうんの呼吸が要求されるので疲れる。ビジネスとの差額でグアムにビジネスクラスで行けるので仕方がない。スピードを落としてラクに泳ぐ。以下の順で意識した。

  • 100ストローク:入水位置を手前にして肘の伸びしろを確保
  • 100ストローク:キャッチの型を5cm遠くで作る
  • 100ストローク:ストロークの軌跡と肘てこ
  • 100ストローク:入水する手とキャッチをてこで連動(スイッチてこ)

・2本目~6本目@1.20秒~1.30秒~1.15秒 

エンドレスプールはダイヤルを回してスピードを調整するが、2本目以降は5mmずつ水流を速くした。10回でダイヤル180度分になる。

 これまでは気がつかなかったが、2番目のキャッチのところで自分のからだが下がり、スピードが遅くなった。これまで力を入れてキャッチしていたが、エコノミー症候群で手首や肘が使えないのでリラックス状態となり、推進力が落ちたのが原因である。

 力を入れると関節が痛むため、力を入れずに自分のからだの位置を元に戻す(=スピードを上げる)には何をすればよいか試してみた。試せるのは最初の100ストロークの意識と、リラックスした状態でのキャッチの型づくりのみである。

 その結果肘の伸びしろを確保し、しかもキャッチの型の位置を5cm下げることでからだの位置が元に戻るのが確認できた。どうやらキャッチを意識することで手の位置が水面に近くなり、その結果バランスが損なわれたようである。

 そこで100ストロークずつ変える2番目、3番目、4番目の意識において、前のめり感をどの程度加えるとラクに現在位置を維持することができるかを実験したところ、前のめり感を7割まで高めることができた。つまり都度変える意識で得られる感覚の割合は3割でも、速度を維持することができる。

 前のめり感については、以下のようにして上げることができる。
  • 意識が変わっても肘の伸びしろを減らさないようにする。
  • キャッチやプルを意識しても手の位置を「必要以上に」上げない。(下げすぎても抵抗になることがわかったので、前のめり感が維持できるぎりぎり上の位置を決める)
  • へそ下の腹筋を引き上げてドローイングして、腰と足を高い位置に置く。

・7本目@1.10、1.05秒

 7本目からは50ストローク@1.10秒として4サイクル、50ストローク@1.05秒として4サイクル行い、7段階でスピードを上げてエンドレスプール最速(1分10秒/100m)の2cm手前(ダイヤル円周相当)までの速いスピードで実験した。

 この段階においてようやく前のめり感を5割に下げ、他の意識を5割まで上げて力を加えることで速度に対応することができる。スピードは速いにもかかわらずテンポはゆっくりであり、全力の7割程度の強度でそれぞれ50ストロークを維持することができた。


 今回の稽古により、やはり基本に帰って正解であることが実感できた。前のめり感をふやせば他の力は3割程度で巡航速度を作ることができる。ごく短時間スピードを上げたいとき(5分程度)、3割程度エネルギーを追加投入すればよい。

 エンドレスプールは水流の速度が一定なので、速度が落ちる(=劣化する)要因を調べて対策を講じることができる。長距離を泳ぐとまず落ちるのが前のめり感なので、今後も「前のめり感が7割」を肝に銘じて泳ぐ。


練習後の気分:9(新しい発見は基本中の基本だった)


2014年10月15日水曜日

基本に帰る

 熱海やグアムで泳いでいるビデオを分析した結果、遠い入水が疲れの原因になっている可能性があることが判明した。そこで2日間にわたりエンドレスプールで入水位置を調整し、本日25mプールで4kmを泳いで効果を確認した。

肘の位置の入水

正しいスイッチの型では、入水する手の指先は水中で伸ばした手の肘の横延長線上に置く。この効果は以下の通りである。
  • 肘の位置が高くなり、肘の自由落下を入水動作の初速に使うことができる。
  • 水中で伸ばす肘の距離が増えることで、体幹の回転と連動させることができる。
  • 肘を素早く伸ばすことで、加速を上げることができる。
 一方デメリットは以下の通りである。
  • 入水する手を伸ばしている間、水の抵抗を受ける。
  • 入水する手を伸ばすことに時間をかけるため、キャッチのタイミングが遅くなる。
  • リカバリー→手を伸ばす→キャッチとなりプロセスが一行程増える。

手首の位置の入水

  ロットネスト海峡横断を決めて以来、テンポの速い泳ぎやキャッチを確実に行うことを意識した結果、入水位置が伸ばした手の手首、あるいはさらに遠くになっていた。水抱え感(厳密には引っ掛け感)があがり、この引っ掛け感を力点にして入水の手を加速することができるので、上記の肘の自由落下の代替になると考えていた。

 5km、90分程度の練習では手が疲れることなく引っ掛け続けることができていたが、今回熱海やグアムで5時間、3時間、2時間と長時間泳ぐと、引っ掛け感が極端に弱くなり、手が疲労することがわかった。これは「足が棒になる」のと同じような状況であり、乳酸が溜まり(正確には乳酸発生に伴う水素イオン濃度の上昇)、筋肉が言うことをきかなくなるのが原因と思われる。


肘の位置で再び入水してみる

日本に来てからエンドレスプールで練習することができたので、鏡で入水位置を確認しながら肘の位置入水を試みたところ、手首の位置入水よりもラクに体を前に送ることができた。特に肘の自由落下による入水動作の初速づくりは、その加速を力点として水中の手を作用点にする「てこ」を導入することでキャッチもラクにできることがわかった。

 肘の横延長線は見えないので、感覚的には頭のてっぺんの隣に入水するようにした。入水直後に中指のスイッチを入れて方向を変え、スイッチを直ちに切って手を前に伸ばす。自由落下が十分得られない場合は、入水位置が遠くなっているとすぐにわかる。肘の位置入水は長距離に欠かせない道具である。


プールでテンポを変えて練習してみる

1.15秒でスタートして1.30秒まで落とし、1.05秒まで上げた。テンポ1.15秒でも肘の位置に問題なく入水することができ、自由落下による加速を感じることができた。当初懸念していたキャッチのタイミングやてこ入れのタイミングも問題なく、手首入水よりもラクであった。 

 テンポが1.10秒になると状況は一変する。肘を水中で伸ばす動作がテンポに合わせるときにネックになる。従来なら手首位置入水に変えてテンポに合わせるのであるが、プッシュの距離を短くしてタイミングを合わせた。ストローク数は18で1.15秒のときと変わらなかったので、力を使うプッシュの代替として入水後に手を伸ばす動作が機能したことになる。

 1.05秒でもさらにプッシュの位置を手前にすることで肘の位置入水を維持した。全体的にストロークが浅くなる感覚があり、ストローク数も20まで上がったがこれは今後の課題であろう。

 結果として肘の位置による入水は手首の位置による入水よりもラクであり、速いテンポでも対応することができた。見た目も美しくなるので今年いっぱいは肘の位置入水で技術を磨くことにする。その後臨戦態勢になったときには使い方について検討する。


○メニュー

・感覚を磨く400m(50ずつ7つの感覚)
・テンポピラミッド400×10(100入水位置と角度、100キャッチの型、100肘てこ、100入水てこ)

練習後の気分:8(外は冷え込んで寒かった)

2014年10月8日水曜日

水深30cmで泳ぐ

グアム自己練習の締めとして、朝5km、昼OWS4km、夕方プール4kmを行った。海の泳ぎはこれまでで最も脅威を感じる4kmとなった。

○コース

ウェスティン前1番ブイ設置場所から、パシフィック・スターホテル(旧マリオット)のビーチまでの片道2km。潮位は9:30の開始当初が1.6(潮位表数値)で問題ないと判断したが、終了時点の11:00では1を切っていた。

○ムラサメモンガラとの戦い


ウォームアップのため2番ブイに向かって泳ぎ始めたところ、いきなりムラサメモンガラに右手を咬まれて1cmの穴が開いた。これまでにない攻撃的な態度である。台風通過後で集中的に産卵をしているのだろうと自分を納得させていたが、その後1km以上にわたって足をつつかれたり、手をつつかれそうになった。

これまでのキャンプやスイム体験では、このように攻撃的なヤツはコース上に1匹か2匹しかいなかった。しかし今回はあまりに継続的に攻撃を受けるので、バタ足をしてみたり、手で水を泡立たせてみたりして威嚇した。

ところがこの威嚇に対して、するっとよけて私の正面に構え、突っ込んで来るようになった。こうなると格闘である。元来自分の卵を守るための攻撃であり、5m程度の範囲しか縄張りを持たないのがこの魚なのだが、どう考えても自分の縄張りを越えて攻撃をしかけてくる。同じ魚がずっと私を追っかけているのか、泳ぐ先々で全てのモンガラの怒りを買ったのかは残念ながらわからない。

足や手をバタバタさせることで、後半のために蓄えていたエネルギーを前半1kmで全て使ってしまった。ダッシュした後のような放心状態で、この後は泳ぎ続けることになる。最後の試みとして1km付近で一旦陸に上がり、そこから海岸線30m以内で泳ぐようにしたところ、モンガラと遭遇することはなくなった。また遭遇しても攻撃を受けることはなかった。やはり同じ魚が1kmもついてきたのであろうか。

○水深30cmとの戦い

キャンプ2クール目でも水深40cm状態となり、お客様は相当泳ぐのに苦労されたようである。今回は潮位を見て大丈夫だと判断したが、ハイアット前から教会にかけては非常に浅く、水深が30cmであった。特に帰りは魚を避けるために砂浜ぎりぎりを泳いだので、余計に水深が浅くなった。

前回の反省より、スカリングで進むのではなく積極的に水をかいていった。この結果次のように泳げばよいことがわかった。
  • 水深40cm以上(ひざより上):キャッチポイントを水面すれすれにして、わきの下あたりでフィニッシュする。体幹の回転は使わない。息継ぎは横向きだが、伸ばした手で水を下に押さないように注意する。
  • 水深40cm未満(ひざ下):片手ずつ水面すれすれを動かす。キャッチアップに近いタイミングで両手を入れ替える。フィニッシュすると砂をこするので注意。両手を前にしてスカリングしながら息継ぎする。
水深30cmでも十分なスピードを確保することができた。ただし珊瑚があると胸や腹をこするので水中サイティングは欠かせない。

○心拍数スイム

当初は心拍数を上げて2km泳ぐことができるかをテストする目的であったが、魚の攻撃や浅瀬でそれどころではなくなった。問題が発生する前までは90~100を維持していた。今後はエンドレスプールで心拍数をコントロールする練習を行う。


ロットネスト横断のためのオープンウォーターの練習はこれで終わりで、後は1月末からの直前キャンプを残すだけとなった。今回は海でもプールでもこれまでで最も泳ぎ、いろいろな収穫の得られたグアムトレーニングであった。

2014年10月6日月曜日

タモン湾の端から端まで6kmを泳ぐ

台風18号と19号が通過する過去最悪の天候の中、キャンプ2つを無事に終了することができた。ランやスイムはいずれも開始1時間前、終了1時間後には大雨、大風の中、各セッションとも雨に降られることなく終了できたのは奇跡に近い。

台風19号は大型でグアムの北、ロタを直撃した。前日夜からCondition1が知事より発令された。これは外出禁止令で、送迎バスも全て運行停止、レオパレスのコンビニも閉店となった。沖縄での台風直撃を経験しているので前日に食料を調達し、台風の通過に備えた。夜は静かで拍子抜けしたが、朝5時に起床したときは風と雨が非常に強く、ドアの前には水たまりができていた。

ドップラーレーダーで午後3時頃には一旦雨が収まることがわかっていたので、タモン湾を端から端まで往復した。距離は6.23kmである。

○コース

新設のロッテホテル前からヒルトンまで、湾を砂浜に沿って泳ぐ。これまではウェスティンからパシフィックスターまでの2kmを設定していたが、今回は前後を伸ばして片道3km、往復で6kmとした。

○コンディション

台風が通過した数時間後とあって、珊瑚礁の先は水煙が立つほどの荒波である。当然湾内のうねりも非常に大きく、過去最大であった。感覚的には初島-熱海の前半のような状況である。

また潮位の関係から午後3時半に開始したこともあり、潮の流れが普段泳ぐ時間と全く異なっていた。

○泳ぎ方

  • テンポ:キャンプ中の練習では速いと感じたが、本番に合わせて1.0秒に設定した。
  • 最初の1.5km:うねりがかなり高く、目標のブイが全く見えない。とりあえず進んでいる感じ。遠くの建物を目標にして泳ぐため、時々後ろを見て左右にずれていないかをチェックした。本番モードに入っているため、テンポ1.0秒を速く感じることはなかった。
  • 折り返しまで:パシフィックスター以降は未知の領域であった。イパオビーチの小屋を目印に直線で泳ぐ。イパオビーチからヒルトンまでは非常に静かで泳ぎやすかった。
  • 折り返しから1.5km:追い潮で滑り感たっぷりで泳ぐことができた。ランニングでは下り坂でリラックスして充電することが望ましいが、スイムの場合は水抱え感を増やして加速する方がよさそうである。自転車のギア使いに近い。
  • 残り1.5km:エンドレスプール状態。過去このコースは追い潮でラクに滑ることができたが、今回は時間が異なったこともあり全く進まない。1ストロークで30cm進む感覚である。最初は「1ストロークずつしっかり泳ぐ」ことを意識したが、これでは疲れると思い「テンポを上げて7割の推進力で軽く泳ぐ」方針に変更。自転車のギア使いに近い。

○課題

  • ボディグライドを忘れる:今回はサイティングの回数が多かったので、熱海のときに比べて右首も擦れたのが新しい。わきの下については左側上の擦れが顕著である。いずれにしても補給グッズとペアでボディグライドを用意しなければならない。
  • 足がつる:今回は1時間20分経過時に左土踏まずがつった。これは10kmタイムトライアルと同じである。復旧後2回つったことで全体で2分程度ロスした。今後も足がつるのは必然と考え、つった足をすぐに回復させる方法を学習する必要がある。
  • 潮の流れに合わせる泳ぎ方は、自転車のギアに近いようである。今後自転車について理解を深めることで、泳ぎ方を確立する。

トータルでは1時間58分(補給時間、足つり修復時間を含む)で目標の2時間以内を達成した。
タモン湾では経験したことのない強い潮の流れや高いうねりがあり、意図せず楽しんでしまった。自分では今でもOWスイマーとは思っていない(ドライヤーが必要)ので、ずいぶん変わったものだと感じた。

練習後の気分:10(意図せず楽しんでしまった)