2017年11月2日木曜日

泳げない子と泳げないお母さんが泳げるようになる話 1

最近水泳を教える時間を減らして、カリキュラムの作成に力を入れている。
5月にはカンタン・クロールが完成し、現在カイゼン・クロールと3種目のカリキュラムを新たに作っている。
ここで抜けていたのが「泳げない人」である。まさに偶然か天命か、知人のお子さんとお母さんを教えることになり、これまで3回60分のレッスンを行った。


○こんな子供さんです

9歳の女の子。全く泳げず水も怖がっていた6歳のときに水泳の短期教室に通ったが、ほとんど成果がなかった。
学校では年数回水泳の授業があるが、具体的なことは教えてくれずにテストだけ行う。これまでの3年間で、顔浸けからけのびまでできるようになった。

○こんなお母さんです

息継ぎができないので息が止められる範囲で「泳げる」。何回か手でかいてから立つ。
顔を出したまま平泳ぎをすることもできない。

10歳で泳げないのは親の責任重大

現在検証しているが、クロールで息継ぎしながら25mを泳ぐことが10歳までにできないと、一生できないままになってしまう仮説を立てている。
もちろん現在のお客様の多くは大人になってから水泳を始めた人達であるが、この人達のように「水泳で健康になる」という強い意志を持たない限り、大人になってから自主的に水泳を学ぶことはない。

これまで多数のお客様から聞いた話によると、顔浸け、けのびができるレベルから25mとりあえず泳げるようになるまで、40歳以上がフィットネスクラブなどのレッスンを受ける場合数ヶ月~1年程度かかる。そこからさらにターンや別の種目となると数年単位である。そこまでの長期間少しずつ技術を磨くことのできる忍耐力のある人達だけが、泳げるようになる。おそらく何倍もの方達が途中で挫折しているのであろう。

一方子供は、10歳ぐらいまでなら一般のスイミングクラブで半年ぐらいで泳げるようになる。圧倒的に早い。だから子供のうちに学ぶ必要がある。

ところが小学校高学年になると、泳げないことが恥ずかしいと考えるようになり羞恥心が芽生え、低レベルのクラスに入ることを嫌がる。中学生以降なら教わる場もなくなってしまう。そして泳げないまま大人になってしまうのである。

自転車に乗ることと同じように、泳げるようになることも親の責任である。中高年にとって水泳を有酸素運動の手段として持つことは非常に重要である。自分の子供の40年後、50年後を見据えて、将来生活習慣病にならないように今から準備をしてあげるのが親の努めである。

レッスン1回目

水に対する恐怖心がどの程度あるかわからなかったため、以下をテストした。
  • 口で吸って口で吐く
  • 息を止めて口の上まで頭を沈める
  • 息を止めて鼻の上まで頭を沈める
  • 頭を横にして耳を水に浸ける
  • 下を向いて顔を水に浸ける
  • 頭を水没する
  • 顔を水に浸けたまま足を床から離す
  • 浮く
いずれも親子でクリアしたので、ここから先はカンタン・クロールのドリル進行とした。

平らな姿勢:問題なし

浮くことができれば、姿勢をまっすぐにすることができる。あとは前傾して床を蹴ることができれば、両手前グライドの完成である。
水慣れテストでは5秒しかもたなかった息も、この段階で8~10秒まで止めることができるようになった。

斜め姿勢:できない

当たり前である。こんな姿勢は陸上で作らないので、水中ではイメージができない。
カンタンレベルのお客様が斜め姿勢を安定させるのに苦労するのを見てきたが、その前段階でも大きな山があることがわかった。問題のステップは以下とみた。
  1. 斜め姿勢がなぜ必要か、脳が理解できていない。
  2. 水面に対してからだを斜めにするという座標感覚がない。
  3. 斜めにするためにからだのどの部分に何を命令してよいかわからない。
どれか一つでも解決できないと、斜め姿勢はできないのである。
何回かアドバイスしながらやってみて、一つの結論を得た。
できないまま先に進める
脳が重要性を理解するためには、スイッチで体重をかけたり、リカバリーで手を水上に出すという斜め姿勢が前提となる動きを行うことが必要と判断した。そこでできないまま倒れ込みスイッチに進めたのである。

片手スイッチ:平らな姿勢で終わる

斜め姿勢から始まる片手スイッチも、平らな姿勢で終わる。
しかし手を入れて前傾すればからだが前に進むという後ろから前への重心移動はこの段階で理解し実践できるようになった。これで良しとする。


両手スイッチ:両方の手が同時に動かせるようになる

これまで大人を教えているときに苦労していた「両手を同時に動かす」ということは、一発でOKであった。これは「手で水をかく」という動作を習ったことがないのが理由である。

キック:バタ足ができるようになる

両足から片足ずつ交互、さらにバタ足への流れも、子供さんは一発でOK。お母さんは「水を後ろに押す」という考えが残っていてクセのあるキックになったが、ラクになったということでこれもOKにした。

最後:6回スイッチで終わる

リカバリーについてはわきの下を開いて手を前に送ることだけを教えて、続けてスイッチできるか試した。
結果は二人とも6回スイッチまでできるようになった。息継ぎなしクロールの完成である。
リカバリーの手は半分沈んでいたり水上で投げ出したりしていたが、いずれもこの段階ではOKとした。
グライドするときの斜め姿勢も、子供さんはほぼできるようになった。お母さんは「からだの浮き輪」もあるのでできなかったが、これは次回修正する。

顔浸けからけのびまで3年かかっていたのが、60分でクロールが泳げるようになったことに二人とも大喜びであった。お母さんは娘と自分の分とで2倍の喜びであった。

最後にお楽しみタイムとして、エンドレスプールの流れに乗る遊び方を教えたところ、最高速の水流に乗って流れるのを大層喜んで繰り返していた。60分前までは頭を沈めるのがやっとだったのに、トラウマがなければ恐怖はすぐに除くことができるのだと感心した。


知らないうちに斜め姿勢ができている

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