2017年4月7日金曜日

【プライベートWS】掻く、蹴るから「水を押す」へ

  大人が水泳を上達させるには、脳の果たす役割が非常に大きいと考えている。脳がどのように情報を解釈してからだの各部位に指令を出すのかが、水泳上達の鍵となる。

○手で「掻く」

  脳が手に水をかくように指令を出すと、手は陸上で得られた知見に基づいて次のいずれかの動作を行う。

  • (a)「雪かき」のように、からだの前にある水を手前に引き寄せる。
  • (b)かゆいところを掻くときのように、肘を引いて手と前腕を後ろに動かす。
  (a)の雪かきをするときは、雪や地面との摩擦を使って雪かきを固定してから、雪かきを手前に引くことで雪を集める。水中で同じことをしようとすると、手を水中でひっかけて手前に寄せることになる。しかし実際は手が水の中で沈んでしまう(摩擦や地面がない)ので、肘が伸びた状態で手が下に動き、棒がきの状態になる。
 (b)のように水の中で肘を引くと、水の抵抗が減って速く動かすことができるものの、抗力となる推進力も減ってしまう。
 従って1も2も水の中では効果的な動きとは言えない。脳は手に対して、「水をかく」ように指令してはならないのである。

○足で「蹴る」

  同じことが足にも言える。脳が足に対して「蹴る」ように指令を出すと、足は陸上で得られた知見に基づいて、以下を順番に行う。

  1. 立ってボールを蹴ることをイメージして、まずかかとを後ろに引き上げてボールとの距離を作る。
  2. 足の自由落下、足の筋肉および腰のひねりを使って最大のスピードで足がボールに当たるようにする。
  3. ボールに当てた後は、できるだけ遠くに蹴るように足を前に運ぶ。
 まずかかとを引き上げることで、足が水上に出てしまう。もともとボールがないため、どこがインパクトポイントかわからない状態となり、水上に出た足は水面をインパクトポイントに設定してしまう。そして最大のスピードで水面に足が当たり、大きな水しぶきが上がる。ここまでの動作は足の位置を水面に近づけることにも、推進力にも貢献しない。

  ビデオを見ると、この人はかいているな、この人は蹴っているなというのがすぐにわかる。脳が具体的な指令を出さないので、手足はこれまでの知見に基づいて精一杯努力しているにもかかわらず得たい結果が得られない状態である。このようなときは手足を責めてはいけない。管理職である脳が的確な指示を出せるように知識を得なければならないのである。

○掻く、蹴るから「水を押す」へ

  まず「水を押す」という考え方に切り替える。次に押す場所=水が当たる場所を決める。最後に水を押す方向とどのように押すかを決める。
 手の場合、手のひらと前腕に水を当てて後ろに押す。
  1. 手は水面に対して垂直面を維持することで、水に当たる面積を最大にする。水面に対して前腕が垂直である(指先がまっすぐ下を指す)必要はなく、垂直面に収まっていればよいので肘は鋭角になる。
  2. 前に進みたいので、水を後ろに押す。下に押さないように肘や肩をコントロールする。
  3. 陸上で物体を押すのと違い、水中では筋肉を緊張させても水を押すことにならない。押す=力を与える=手を素早く動かす(ニュートンの第2法則)ために、関節をゆるめて素早く動かすための筋肉を特定して使う。
  足の場合、 まず足の位置を水面に近づけて水の抵抗を減らすことを最大の目的にする。足の位置を水面に近づけるために、足で水を下に押す。
  1. ニュートンの第2法則を使って効率良く足で水を押すには、素早く動かせる場所を特定する必要がある。ここでは足の甲と決める。
  2. 足首の先が素早く動けばよいだけなので、蹴り幅は足の大きさ程度になる。この蹴り幅を作るには、ひざをひざの厚みだけ曲がるようにゆるめればよい。足首から先を素早く動かす=足首が運動の支点になるので足首はできるだけ動かさない。
  3. ひざをゆるめて蹴り幅を作ったら、ただちにひざの裏を素早く伸ばすと同時に足首から先をゆるめる。こうすることで足首が支点、ひざが力点、足の甲が作用点となるてこを作ることができる。
  4. 足首から先がゆるんでいれば、足の甲で水を素早く押した反動で水が足を押し上げる。あとは足を締める意識だけで、足が水面近くに上がってくる。
  どのような目的に基づいて、どこをどのタイミングでどのように動かすのかを脳が理解し、手足に指令すれば、手足は指令した通りに必ず動いてくれる。得たい結果が得られなかったら、手足への指令の内容を変えればよい。
 プライベート・ワークショップはこのプロセスを一人でじっくり学習することができる。このようにして得たい結果が得られたときに、上達したと感じることができるのである。

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