○管理職としての脳
管理職とは「脳」のことである。部下はからだの各部位と考える。自分の意志でからだを動かすとき、脳がからだの各部位に指令を出している。ただし普段の生活ではこれまでの経験の蓄積があるので、脳が細かく指令を出さなくても手足が自主的に動く場面の方が圧倒的に多い。
つまり脳は優秀な部下を擁した管理職といえる。部下が管理職の意向を「忖度」して行動して結果を出すので、管理職の資質があまり問われない。
そのような状況のなかで泳ごうとするとどうなるか。管理職である脳は、部下である手足に対して細かい指示を出さない。それでいて脳はきれいに泳いだり、速く泳いだりすることを結果として期待する。
一方部下である手足は、脳から発せられた「手でかく」「足で蹴る」「呼吸をする」という言葉に従って、これまでの経験に基づいて動作しようとする。ところがこれまでの経験は全てが陸上で得られたものであるので、水中ではうまく動くことができない。そうなると脳は得たい結果が得られず不満に思い、手足のせいにする。
うまく泳げないのは、手足が思うように動かないのが理由ではない。手足が思い通りに動くように、脳が指示できていないのが理由なのである。
○管理職研修とは
水中で動くという、これまでの環境とは全く異なる状況で手足を使わなければならないことを脳がまず理解し、手足にどのように指令を出せば得たい結果が得られるのかを理解することが管理職研修の内容である。得たい結果を得るために伝える内容を決めるというのは、コミュニケーションの本質でもある。脳と手足のコミュニケーション方法を学ぶといってもよい。
研修には次のような内容が含まれる。
- 脳が手足に対して指令を出すことで、手足が動いていることを理解する。脳が得たい結果を得るためには、手足に対して適した指令を出す必要がある。
- 動作について、脳が理解する=納得する。脳が理解しなければ手足に指令を出すことができない。水泳についての様々な動作の理論的背景を説明する。
- 一貫性のある指令を出すために、言葉を見直す。常に同じ指令を出せるようにするためには、言葉にする(文字化する)必要がある。これまで使っている言葉が適切かどうか判断して、得たい結果が得られるような言葉を選ぶ。
この後に続くドライランドリハーサルでは、からだの各部位に対して指令する内容をストロークフェーズ毎に細かく分けて説明する。お客様にはそのときの動かし方を、自分の言葉で説明してもらうことで脳からの指令に置き換える。こうすると理解が深まるだけでなく、レッスン後の再現性も高くなる。
プールセッションでは指令した内容と結果との差についてビデオを見ながら理解してもらう。この差を埋めるために指令をチューニングすることで、再現性のある動きが可能になる。
このように脳の活用を前面に出したレッスンを行っている。まだ実験段階であるが、これまでのレッスンよりも進行が早く理解度も上がっている。
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