○アルカトラズスイムとは
サンフランシスコから約2.4kmの距離にあるアルカトラズ島は、かつて刑務所として使われていた。低温であることや潮の流れが非常に速いため、刑務所から脱出してもサンフランシスコには着けないとされ、過去に3人組が脱獄に成功しただけである。アルカトラズスイムはアルカトラズ島付近までボートで行き、ボートから飛び降りて水中スタートして海洋公園まで泳ぐ。距離は2.4kmでOWSとしては短距離なのだが、潮の流れが速いため難コースとされている。サンフランシスコ湾で泳ぐスイマーには、登竜門として位置づけられている。
○レースのための練習
40~50分のスイムだが、すでに毎週末に1時間以上サンフランシスコ湾で泳いでいるので低温持久力は問題なかった。
速い速度を長時間維持するために、究極水着の使用割合を距離ベースで75%まで上げ、セット単位を200から400ydに伸ばした。
○レース当日
このレースには昨年申し込んで、昨年実施するものと思い込んでサンフランシスコに来たら誰もいなかったという苦い思い出がある。
今回は近くのホテルに前泊して当日を迎えた。朝行ってみるとものすごい人の数である。参加者は1000人以上とサンフランシスコでは最大のスイムレースであった。2艘のフェリーで島の近くまで移動する。
もう一つ驚いたのはウェットスーツで泳ぐ人の割合である。フェリーの中で見たところ、8割がウェットスーツ着用であった。普段海洋公園で練習しているときは2割程度であり、ウェットを来ていると「おまめ」「初心者」扱いされる。こんな低温の中でも水着で泳ぐのが「アメリカ人の常識」で、泳げないことは劣っていることだと感じていたが、実際には水着で泳ぐのが非常識であることがわかり安心した。
○スタート
船から飛び降りてスタート地点まで泳ぐ。1000人が一斉スタートするので、1艘あたり500人が順番に降りて、その後スタート地点で待つことになる。泳がないで10分程度待つと言われたので、からだが冷えることを恐れて最後尾で降りたが、これが大失敗だった。
船上からはスタートラインで待つ人達が近くに見えたが、一旦飛び込んで浮上すると方向がわからない。他の人が泳ぐ方向を目指して泳いだが、なかなかスタートラインに着かない。そうこうしているうちにスタートの汽笛が鳴り、スタート地点より前からスタートすることになってしまった(マラソン大会状態)。おそらくこれで3分以上のロスになった。
1000人が泳いでいるものの最後尾からのスタートだったので、バトルはほとんどなし。逆に考えればかなり広がっている状態を許容しており、今後のナビゲーションで要注意だったのだがそのときはそんなことを考える余裕もなかった。
○目標は右なのに左に行けの指示
当日の潮の状況はフェリー船内で放送されたようであるが、拡声器が故障していて途切れ途切れで何を言っているかわからない。準備資料では向かって左から右に流れるebb currentが強いということで、ゴールはやや左側をめざすように記述されていたのでそのようにして泳いだ。
ところが8分程度経過したときに、カヤッカーに「もっと左に行け」と言われた。ダウンタウンを通り越してベイブリッジの方向であり、完全に逆方向である。他にも同じ方向に泳ぐ人達がいたので疑問に重いながらベイブリッジを目指す。
その後はカヤッカーに出会うこともなく10分程度泳いでいたが、さすがにこのままではまずいのではないかと考え、目標物を次第に右寄りにしていった。次のカヤッカーに出会ったときには、かなり右の目標物を目指すように言われたので、このとき初めて後ろを振り返ってアルカトラズ島をみて、自分が相当流されていることがわかり愕然とした。
○いろいろな環境を試すチャンス
この段階でよいタイムを望むことはあきらめて、オープンウォータースイムの実戦練習に意識を切り替える。マラソンスイム・プログラムで作成した8段ギアの作り方を思い出し、環境に合わせてギアを変えて泳いだ。
小さなうねりではエッジをかけることが大切で、大きなうねりではあわてることなくサイティングするか息継ぎするか次の動きを決める。水温が変化する場所では冷えを防ぐために加速を上げた。
海洋公園入口の防波堤沿いでは、やっと本来来るべき追い潮状態になりリラックスしながら泳いだ。
○結果
51分で全体の真ん中、エイジグループでも全体の全体の真ん中あたりであった。泳いだ距離は言われていた距離よりも600m長く3kmを超えた。実際の軌跡も下のようにかなり右側にふくらんでいる。正しいナビゲーションができれば10分は縮められたと思うと残念である。
一方100mペースは1分44秒で、現在の練習ペースと同じであった。後半は練習のつもりで泳いでいたので、普段通り泳げたことになる。
目標物が遠くのものになればなるほど自分が横に流されてもわかりにくい。後ろの目標物と3点で確認することが大切であることはこれまでも実践し指導してきていたが、1000人のレースということで冷静に対応できなかったことを反省し、次につなげる。
また潮流の激しい区間を泳ぐときは、潮位表や水流速度表を参考にして自分の泳ぎ方を決める必要があることもわかった。
来年にもこの大会に参加して、どこまで成長したか確認する。
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