2018年4月27日金曜日

水泳動作の三原則:「重力」「座標」「支え」3

三原則の最後が「支え」である。姿勢や動作がうまくできない方の最大の要因だとわかったのは、プライベートワークショップで時間をかけてからだの動かし方を教えることができたためである。これまでの10年間の課題が一気に解決した。

3. 支え

人間は姿勢を作るときや動作をするときに、動かさない場所を決めて姿勢や動作の支えとしている。物を運ぶときや投げるときは支えを意識して決めているし、姿勢を正すときは無意識にからだの一部を支えにして他の部位の位置を調節している。

文献やエビデンスがないので「全て」とは言わないが、水泳について言えば約20のアルゴリズム全てに支えが存在する。

例:斜め姿勢を切り替えるクロールの動作

支え:頭→従って頭は回転しない
動作:スイング→回転運動のため軸が存在する
軸:長軸→頭頂部から背骨を通り腰に至る直線

例:斜め姿勢

支え:水中で伸ばした手
動作:斜め姿勢を維持して胸で水を押せるからだの向きを決める
(回転運動および前傾運動)
軸:長軸および横軸→腰骨を貫通する直線

例:リカバリー

支え:水中で伸ばした手
動作:水上の手を前に運ぶ→下から上への垂直スイングと横方向のスイング
軸:垂直スイング→肩、水平スイング→肘

例:リカバリーの垂直スイング

支え:胸鎖関節
動作:広背筋を使って鎖骨を前に運ぶ
軸:胸鎖関節

例:水中のキャッチ

支え:肘
動作:前傾しながら前腕を立てる
軸:肘

従って、以下のような課題は支えが見つからないことが原因となる。
  • 水中で手を伸ばすと顔が横を向く。
  • グライド姿勢で肘が曲がる。
  • グライド姿勢で背中が湾曲する。
  • 回転角が大きい(オーバーローテーション)。
  • リカバリーで肩や肘、手首に力が入る。
  • リカバリーで肩の可動域を越える。
  • キャッチで手首が折れ曲がる、手に力が入る。
  • キャッチで肘が伸びている。
これらの課題はスイマーの持つ課題全体の8割以上を占めている。
つまり姿勢や動作において何が「支え」になっているかを理解し、姿勢を作ったり動作を行ったりすることで、8割以上の課題が解決できるのである。

今後のレッスンではこれら支えについてお客様にまず理解していただき、ドライランドで確認してから水中でその支えが機能するか確認するアプローチをとる。

○静的な支えと動的な支え

一般的な支えは支え自体は動かず、他の部位が動く。これを静的な支えと呼ぶ。
水中ではおもしろいことに、物体を素早く動かすことで水の抗力が生まれ、陸上の摩擦力による抗力と同じ状態を作り出すことができる。これを動的な支えと呼ぶ。

動的な支えは次のタイミングで作ることができる。
  • 入水した手を水中で素早く伸ばす。
  • 水中にある前腕を肘を支点にして素早く動かす→キャッチ
  • 水中にある曲がった肘を素早く伸ばす→プッシュ
  • 曲がったひざを素早く伸ばす→キック
これらの動的な支えを使ってより大きな力を生み出すことを「てこ化」と呼ぶ。
てこを使うことで小さな力でより大きな推進力を生み出すことができる。

なおこれらの動作で大きなエネルギーを使わないことに注意する。力を入れたら素早く動作できないためである。得たい効果が得られるようにするために、てこの元となる動作は最小限のエネルギーで済むように練習で磨く必要がある。




2018年4月26日木曜日

水泳動作の三原則:「重力」「座標」「支え」2

三原則の2番目が「座標」である。

2.座標

座標とは自分を中心にした三次元の空間座標のことである。立った姿勢では、進行方向をX軸、地面と平行で進行方向と垂直な軸をY軸、地面と垂直な方向をZ軸とする。
この座標を捕捉するのが位置覚である。位置覚は深部感覚の一つで,視角などに頼らずに,自分の身体の各部がどういう相対的な位置にあるかを判断する感覚をいう。

地面に垂直に立った姿勢では位置覚による座標が、絶対座標とほぼ同じになる。このためからだを動かしたい方向と実際の方向は一致する。

ところが上半身を前傾させると、脳が考える水平面と実際の水平面にずれが生じる。このため「からだに対して」水平に動作させようとしても、絶対的な水平面を意識してしまい動作がうまくできなくなる。ゴルフのスイングが難しい理由である。

○水泳の座標が難しくなる理由1:軸が混ざる

水泳の場合は横に伏して運動する。そうなると本来はXYZ軸が変わるはずであるが、陸上のXYZ軸に基づいた位置覚を引きずって動かすことがある。

簡単な例が、リカバリーの素振りである。陸上で上体を垂直にしたままリカバリーの手の動作を行うとき、からだは地面に垂直なので本来は上方向に泳ぐように動作をしなければならないが、前方向に泳ぐことを想定して手を動かそうとする。この結果肩の可動域を越えて手を動かすことになる。初心者では10人中9人がこの動かし方をする。

○水泳の座標が難しくなる理由2:軸が動く

もう一つの理由が、「頭の向きで軸が変わる」ことである。
位置覚は頭を中心に構成されるため、頭が傾くとXYZ軸がその分だけずれる。
  • 前を見ながら泳ぐ
  • 下半身が下がる
  • 息継ぎで頭が曲がる
  • 手を内側に入水することで頭がはじかれて外を向く
のようなときに、自分の考える座標と実際の座標に差が生じる。
自分では正しい位置に手を動かしているつもりでも、実際には異なるところに手があるケースはかなり多い。

○正しい座標を「補正力」で身につける

自分の考える(位置覚による)座標と、絶対的な座標を近づけることができれば正しい動作にしやすくなる。そのためには、
  • 自分の考える座標は絶対的な座標とは異なっていることを認める。
  • そのうえで補正をかける。
が必要である。

例えば入水位置が狭いと指摘されたのであれば、進行方向(時計盤でいえば12時の方向)に手を入水するのではなく。2時や10時の位置に入れる。
手を伸ばす位置が浅いと指摘されたのであれば、今よりも30cm深いところに手を伸ばす。

このようにして補正をかけることで、正しい状態に近づける。繰り返し練習すれば(1万回)、補正をかけた動作が組み込み関数になるので意識しないでも正しい動作ができるようになる。

具体的には以下のように場所を決める。
  • 水平面の動作は、水面上に時計盤をイメージして短針の位置で場所を決める。
  • 垂直面の動作は、水面からの距離で場所を決める。
  • 進行方向をからだの軸と一致させ、立位のときのZ軸にする。立位のときのX軸にしない。

○自分の座標を絶対座標にする

主にプールで泳ぐのであれば上記の方法だけで良いが、オープンウォータースイムを行う場合はもう一段階ステップアップする必要がある。

プールで静かな水面を基準に動作を行うことに慣れてしまうと、水面が大きく変わるオープンウォータースイムで混乱する。そこで自分のからだを絶対座標化して、自分のからだの動きの少ない部位を基点した距離や角度を使うようにする。以下が例である。
  • 手を入水する場所は頭頂部の横延長線上
  • 手を伸ばす方向は伸ばした手が視界に入る方向
  • リカバリーは背中の面を越えない。水が被さってきたときはリカバリーせずに待つ。
こうすればどのようにラフな海でも、落ち着いて泳げるようになる。



2018年4月24日火曜日

水泳動作の三原則:「重力」「座標」「支え」1

水泳のアルゴリズムを最適化するためには、水泳に特有の動きを考慮する必要がある。
これを水泳動作の三原則と名付ける。

1.重力

○重力を活用しない水中の動作「はいはい」

人間が歩行するときに最初に行うのが、「前傾して」重心を前に移動することである。足はこの重心移動の次に動かしている。
陸上で歩行できない=前傾による重心移動ができない赤ちゃんは、「はいはい」する。
はいはいのアルゴリズムは以下の通りである。

  1. 手を地面に着く。
  2. 手に体重を乗せる(重心を移動する)ことで上体を前に動かす。
  3. 上体を前に動かすことで足を引きずって前に動かす。
  4. 1~3を片側ずつ交互に行う。
はいはいのビデオをいくつか見ると、両手による1と2が最初のステップ、斜め姿勢を作ることで下半身を引き寄せることができると片手交互の1~3までのステップまでできるようになる。

泳ぎの下手な人や泳げない人を見ると、まさに「はいはい」と同じような動きをしている。手を前に伸ばして押さえれば(かけば)からだが前に動くと期待するが、実際には水は地面ほどの摩擦が得られないので手が手前に動くだけになる。空回りである。

それではなぜ下手な人は「はいはい」しようとするのか。それは前傾による重心移動ができないという固定観念を持っているためである。

レッスンではお客様に「前のめり感」100%を試してもらう。水中ではその10分の1が最大で得られるが、それは非常に微細なものである。最大でも「その程度」しか得られないので、前のめりを意識することが難しく、はいはいに頼ってしまうのである。


○重力を活用する第一歩:入水動作

横になった姿勢では前傾が難しい。そこで入水する手を水中に伸ばすことで、前のめり感を作る。
入水する手の肘を高い位置にすることで、入水時の運動エネルギーに転換する。水中で素早く手を伸ばすことで、体重を前にかけることができる。ゆっくり手を伸ばすとからだが水に押されるので体重を前にかけることができない。水に押される力を上回る加速を手に与える必要がある。

○重力を活用する第二歩:浮力を活用する

重力を活用する次のアプローチが、浮力を活用することである。
水中にある物体は、その体積の同体積の水の重さだけ浮力を受ける(アルキメデスの原理)。
この浮力を受けることについて、簡単な実験をやってみた。

ペットボトルの脇にフォーク、下にセラミックを輪ゴムで着けて、シンクの底にボトルが触れない程度にボトルの中に水を入れる(写真1)。なお全体の重量は300g、フォークは22gで体重に対する腕の重さとほぼ同じである。
そのままシンクに入れると、セラミックを着けた側が沈む(写真2)。
写真1
写真2

フォークをボトルの上の方に伸ばす(写真3)。沈めると平らになる(写真4)。フォークを上の方に移動すると、前の方がさらに沈む。手元には割り箸(比重0.4~0.7)とフォーク(比重7.7~7.9)しかなかったので、人間の手の密度に近い物質で比較することができないが、重いものを前に移動するほど重心が前に移動し、その結果受ける浮力の分布が変わることはわかる。
写真3
写真4


次にこのボトルを押してみる(写真5)。静止した状態で押すと押す前よりも位置が上になるが、その後押す前の位置に落ち着く。前に動かしながら手を放すと、後が浮き上がってから、その後押す前の位置(前後のバランス)に落ち着く(写真6)。
写真5
写真6
根拠がないのだが、おそらく、
  • 手を放した場所で水が押し返す
  • ボトルは前に移動しているので、ボトルの下部が水に押し返される
  • その結果前が沈んで後が浮いた状態になる
これを人間で試しても全員が同じように足が浮く。最初に床を蹴っているため足が上に来るという理由もあるだろうが、それを強化しているのが浮力であると考えられる。

上記の実験やお客様を対象にした結果から、
水を前向きに押し続けることで水がからだを前向きに押してくれる
ということがわかった。
これを「水に乗る」と定義する。
この技術を使えているアダルトスイマーは、残念ながら非常に少ない。
しかし競泳の選手は全員この技術を使っているのである。


[NMP]神経動作プログラミングとは

運動学習メソッドとしてNMP(Neural Motion Programming)を確立するため、考えがまとまった部分から文字化することにした。

○最小運動単位

運動における全ての姿勢や動作は脳が指令を出す。
 a) からだのどの部位が
 b) どのタイミングで
 c1) どのような形にするのか(姿勢)
 c2) どのような動きにするのか(動作)
これが最小運動単位になる。
一つの姿勢や動作は、この最小運動単位を複数組み合わせることで実施される。

○インプットによる条件判断

運動には、環境や状況に応じて動きを変化させる場合がある。例えば、
  • 相手の動きに合わせて自分の動きを変える(武道、格闘技など)
  • 物体の動きに合わせて自分の動きを変える(球技全般)
  • 物体が置かれた環境などに合わせて自分の動きを変える(ゴルフ、ボウリング)
  • 環境に合わせて自分の動きを変える(水泳)
これらは主に視覚により情報を入手する。水泳は触覚や平衡感覚など他の知覚を使用する点でユニークである。

これら運動を変えるための情報を「インプット」と定義する。球技では役割が変わるとインプットの種類も変わってくる(例:ピッチャーとバッターと野手)。

得たい結果が得られるように動作を行うのが目的であり、この目的を達成するために必要最小限のインプットがあれば良い。インプットが多いほど条件判断が多くなり、得たい結果を素早く得ることができなくなる(と考えられる)。

○動作をプログラムに見立てる=アルゴリズム化

誰でも短期間で運動できるようにするためには、
 ・運動をできるだけ小さい単位に分解して、
 ・必要なインプットと変えるべき条件を明確にして、
 ・運動のステップを記憶しやすくする
必要がある。

そこで一連の動作をプログラムに見立てて、「アルゴリズム」と呼ぶ。
アルゴリズムには複数の運動が存在し、インプットによる条件判断も含まれる。
おおまかに分類すると、水泳には約20のアルゴリズムが存在する。
これらを暗記して、からだ対して実行命令できるようになれば、誰でもラクにきれいに泳げるようになるのである。

○組み込み関数の存在:運動神経の善し悪し

アルゴリズムの中の運動の一部は、これまでの人生経験において既知のものがあり、これらはステップを一つずつ追わなくても結果を得ることができる。
これを「組み込み関数」と呼ぶ。

運動神経の良い人とは、この組み込み関数を多く持っている人のことである。その人にとって新しいスポーツであっても、その動きを見ながら自分の組み込み関数を呼び出すことにより、見よう見まねでそこそこできるようになってしまう。

ただしこのような人は、組み込み関数を使っているので脳がどのように命令したかを意識していない。そこで人に教えるときには動作を示したり、擬態語(シュッとかバシッとか)や意味不明語(しっかり、きちんと、ちょっと、少し)を使ったりして説明しようとする。教わる方が組み込み関数を持っていればそれでも通じるが、組み込み関数を持っていない(運動神経の悪い人)にはちんぷんかんぷんになる。

子供の頃から水泳を習っていて、水泳について組み込み関数を多く持っている競泳あがりのコーチが、泳げない大人に対して教えづらいのはこれが理由である。

○動作を「暗記する」必要性

レッスンでアルゴリズムができるようになっても、その後の自主練習でうまく行かないことがほとんどである。これはアルゴリズムを正しく行っていない(=バグがある)のが理由である。そしてアルゴリズムを正しく行えない最大の理由が「暗記できていない」からである。

からだを動かす以上脳がその手順を覚えなければならない。「からだが覚える」という表現があるが、これは意味をなさない。からだは勝手に動かないからである。正確には、「脳が手順を伝えなくても得たい結果が得られる」、すなわち組み込み関数にすることである。

一つのアルゴリズム全体が組み込み関数となるためには、1万回の動作が必要と言われている(1万時間とも言われる)。水泳の主な動き全て(20アルゴリズム)が意識しないでできるようになるには、20万回の動作が必要になるのだろう。25m20ストロークなら25万m=250キロ=200日(1回1.25キロとして)と大したことはない。朝晩に素振りをすればその半分で済む。ポイントはアルゴリズムを暗記することを目的にして練習することである。






2018年4月8日日曜日

実録レッスン:ラクに滑るように泳ぐには

短時間で水泳がどこまで上達できるのか。
新しいメソッドの検証の場としてレッスンを始めた。

○お客様:Kさん(52歳)

ー6ストロークしか泳げない(からだが沈むため)。
ーTIレッスン受講歴:なし
ーDVDなどの教材の購入:なし
ードリルの練習:なし

からだが沈むので、泳ぎ続けることができない。
フィットネスクラブの成人レッスンに参加したことはあるが、コーチから「腹圧をかけろ」と言われたものの何をすればよいかわからなかった。
トライアスロンの大会に参加登録をしたので、1カ月で1500m泳げるようにならないといけない。
YouTubeのビデオを見て、これだと思って申し込んだ。

過去のスポーツ経歴

・剣道:小学校および中学校
・空手:高校
・ゴルフ:成人になってから少々

○レッスンのアプローチ

Kさんのスポーツ経歴より、以下についての理解は深いと判断した。
  • 重心移動
  • 素早い動作による加速
  • 支えになる場所と動かす場所の区別
  • てこの利用
  • 相手の動きに合わせて自分を動かす
そこで、以下のような点をまず理解してもらった。
  1. 水泳こそ重心移動が必要であること
  2. 力ではなく加速であること
  3. からだの使い方はどこに指示するかで動かし方が変わること
  4. エネルギー消費が減れば苦しくなくなること
そのうえで、上記の点を阻害する以下の言葉を脳から削除してもらった。
  • 浮く
  • かく
  • 蹴る
  • 運ぶ
  • 伸びる
この段階で新しい技術を吸収できる素地が整う。
次に技術をドリルで身につける。それぞれの技術は動詞でラベル付けするので、動作全体を覚えるのに役立つ。
  • 委ねる:からだのできるだけ多くの面積を使って水を押し、重心を移動する。
  • 跳ねる:ひざをゆるめ、ひざの裏を素早く伸ばして加速する。
  • 乗る:初速を加えた後に、上半身で水を押し続けることで下半身を上げる。
  • 滑る:前後左右がバランスした姿勢で水を押すことで、減速を抑えて前に移動する。
  • 合わせる:手と足、左右の手の動作のタイミングを合わせる。

過去の運動経歴が役に立つ

これまでの指導経験により、どのようなスポーツであれその経験は水泳に役立つことがわかった。
  • からだの動かし方
  • 重心の捉え方
  • 感覚・知覚
こちらにそのスポーツの経験が全くなくても、一般的な知識から「そのスポーツのこの動きはこのようなことをしていますね?」と問い掛けると、ほぼ正解であった。

結局人間がやる運動である以上、人間がやれる範囲でやれることをやっているのである。
従って水泳固有の視点(重力、座標、支え)さえ理解できれば難しいものではないことがわかる。

○レッスンの成果

15分のドライランド・リハーサルと45分のレッスンを1つのセットとして、休憩をはさんで2セット行った。

6ストローク泳いでも沈まなくなり、息継ぎなしで12ストロークまで泳げるようになった。またスピードもほぼ倍に速くなった。

大会まで日が浅いため、確実に呼吸ができる技術と、方向確認する技術を次の習得目標とした。



2018年3月8日木曜日

道具箱を使った効果的な練習(見本ビデオ付き)

美しいクロール ワークショップ(美クロ)を先週実施した。
今回は尖ったテーマばかりだったので、お客様にとっては新鮮であったと同時に、これまでのやり方とは異なるやり方だったので困惑される場合もあった。

例えば斜め姿勢では、これまで「伸ばした手に体重を乗せる」と教えている。お客様にとっても慣れれば側に体重をかけることは心地良くなる。ただ一方では回転のしすぎ(オーバーローテーション)や足の開きを招き、修正が難しい。

そこで美クロワークショップでは「胸の中心で水を押しながら斜め姿勢を作る」という新しい概念を取り入れた。中央に体重をかけながら斜め姿勢ができるのか?については、無意識に側を作ることができるカイゼンレベルのスイマーであれば可能である。この概念がわかると、力の方向が下から前に変わるので、格段に滑るようになる。

この他リカバリーの軌跡や水中の手の助走など、これまで学んだことをゼロベースで次々と見直すことは、心地よさから抜け出して新たな技術に挑戦するうえで欠かせない。今後も美クロは尖り続けるワークショップにしたい。

クロール泳ぐ前の3秒のリハーサルで泳ぎが変わる

「意識をして泳ぐ」ことを勧めているが、実はそんなにカンタンではない。
実際には「意識をして泳ぎを変える」ぐらいにしないと、フィードバックが得られないので修正できたかどうか確認できない。そして泳ぎを変えるためには、意識だけでは足らないのである。

そこで効果的なのが、泳ぐ直前に動作を練習することである。意識をして動作したときに感じられることを予め練習で身につけておき、それがクロールで再現できるように泳ぐのである。動作の所要時間は3秒~5秒と短いが、これまでのレッスンでは非常に高い効果が得られている。これを道具箱と呼んでいる。

例えば「レーザービーム」という道具がある。頭頂部が水面すれすれに来るように泳ぐことで、バランスをカイゼンして姿勢を安定させる目的で使う。

また「入水する感触」という道具は、静かな入水のために必要な感覚である。これをグループレッスンで行うと、驚くほどみなさんの泳ぎが静かに、なめらかになる。

道具箱講習会は非定期で開催しているが、4月の講習会では美しく速く泳ぐために少し尖った道具を用意する。
DVDでは紹介していない新しい道具なので、切れ味を楽しんで頂きたい。

また大阪のスピードアップ実践ワークショップでも、速く泳ぐための道具を徹底的に紹介してすぐにスピードアップできるように準備している。どのように効果が出るかが楽しみである。





2018年2月21日水曜日

力の入れどころを決める

スイム 4000yds

ここしばらく最高気温が17度を超えたので、もう春かと思っていたらいきなり10度以下の日が続く。更衣室からプールサイドに移動するまでにとても冷える。それでも水温は26度あるのでとても暖かく感じる。

基本構成はしばらくの間
500のフォーミング
2000のテンポピラミッド(10×200)
1500のペース練習
としている。

このうちペース練習は、以下のペースを使い分けている。
 22秒:このペースで1650を泳ぎ続けることが現在の目標
 21秒:このペースで1650を泳ぎ続けることがこのシーズンの目標
 20秒:最終目標
22秒で泳ぐ長さは最短400まで延ばしている。
21秒で泳ぐ長さは現在200である。
20秒で泳ぐ長さは現在100である。

テンポピラミッド 10×200

テンポに合わせて泳ぐだけではスピードアップ練習にならない。
ストローク数を減らすために、どこに力を入れればよいかを決めて泳ぐ。

力を入れるというはどういうことか

水泳は力を入れる/抜くというコントラストが見た目にはっきりしない。
ビデオで見てもよくわからないので、真似しようがない。
そのため手をゆるめたまま水中で動かしている人が非常に多い。
しかしスピードを上げるためには力を使わないとならない。
どのように力を入れるのかがポイントになる。
力の入れ方は3つに分けられる。
  • 曲げる
  • 伸ばす
  • 形を維持する
曲げるときには内側の筋肉を意識する。
伸ばすときには外側の筋肉を意識する。
形を維持するときには受ける力(主に水の抵抗)に合わせて使う筋肉を決める。
具体的には各動作において主動筋と拮抗筋が何かを理解して、使う側を締めて使わない方を緩めることで共に緊張する共縮を防ぐことが必要である。

4種類の力の入れ方

今回は以下のように4種類の力を入れ方を決めて、50ずつで力の入れ方を変えて200を泳いだ。
  1. 入水する手を伸ばす:上腕三頭筋を縮める
  2. キャッチとプル:手のひらを手前に向けるために前腕屈筋群を使う
  3. プッシュ:主に前腕の筋肉を使って肘を曲げた形を維持したまま、広背筋を使って手を後に送る
  4. フィニッシュ:上腕三頭筋を縮める
意識する筋肉を変えながら最も良い結果(同じテンポでストローク数が減る)が得られたのが上記の筋肉の使い方である。

同じピラミッド10本でも、前日に比べて200あたり4~6秒短縮することができた。

ペース練習 2×400+2×200+2×100

ペース練習でもピラミッド練習と同様に力の入れどころ=筋肉の使い方=筋肉のメリハリのつけ方を変えて行った。

貯金の割合を同じにしたためタイム自体は変わらなかったが、泳いでいてメリハリがつけやすいこと、メリハリをつけると若干ラクに貯金できることがわかった。

どの筋肉をどのタイミングでどのようにONにするかを今後も磨いて、スピードアップのカリキュラムに導入する。